コラム

トランプ就任で「USスチール買収」はどう動くか...「米国の寛大さ」の行方と、トランプの深謀

2025年01月21日(火)19時05分

「アメリカの寛大さにも限度がある」

実際、USスチールの買収に意欲を示していた米鉄鋼大手クリーブランド・クリフスのローレンソ・ゴンカルベスCEO(最高経営責任者)は「中国は悪だ。しかし日本はもっと悪い」「日本よ気を付けろ。あなたたちは自分が何者か理解していない。1945年から何も学んでいない。われわれの血を吸うのはやめろ」と激しい口調で日本を罵っている。加えて言うと、トランプ氏にとってUSスチールは日本との取引材料に見えている可能性もある。

日米貿易不均衡が問題となった80年代、アメリカの著名ジャーナリスト、セオドア・ホワイト氏は「アメリカの寛大さにも限度がある」と今回とよく似た発言を行っている。

日本ではアメリカの世論を軽視する傾向が顕著だが、当時、首相だった中曽根康弘氏は、米国内の政治環境の変化を敏感に察知。貿易不均衡を是正する政治決断を行ったことで、最悪の事態を回避できた歴史がある。日米関係は日本にとって生命線であり、慎重な対応が求められる。

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プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

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