コラム

最低賃金の引き上げが、実は「企業のため」にもなる理由...労働者の生活を守るだけではない「意味」

2024年08月06日(火)21時03分

日本企業が放置してきた問題を強制的に正すプレッシャーに

一方、企業の競争力強化という点でも、今回の引き上げには意味がある。

企業は高賃金を提示しなければ有能な人材は確保できない。経済が健全に機能し、市場メカニズムが適正に働いていれば、最低賃金制度がなくても自動的に賃金は上がっていく。実際、ドイツはつい最近まで最低賃金が存在していなかったが、日本より圧倒的に高い賃金を実現できていた。


だが日本の大手企業は長年、現状維持に終始して業績拡大努力を怠っており、異様な低賃金が放置され続けてきた。こうした環境下では最低賃金を引き上げることで企業のコストを強制的に増やし、より高い付加価値を生み出すようプレッシャーをかける手法は有効である。

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2025年4月29日号(4月22日発売)は「独占取材 カンボジア国際詐欺」特集。タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

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プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

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