日本を苦しめる「デジタル赤字」...問題解決のために、さらなる「赤字の拡大」が必要となるワケ
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<貿易赤字が定着しつつある日本で、特に問題視されているのが海外IT企業に支払うクラウドサービス利用料などのデジタル関連の赤字だ>
このところ多少、落ち着きを見せているものの、日本の貿易収支は赤字傾向が定着しつつある。2022年の貿易収支は20兆3295兆円、23年は9兆3218億円の赤字だった。貿易収支が悪化している主な要因は、工業製品の輸出が相対的に減少していることや、原油価格、食糧価格の高騰や円安によって輸入金額が増大していることである。
だが、赤字傾向が顕著となっているのはそれだけが理由ではない。エネルギーや食糧など、以前から輸入せざるを得なかった品目のみならず、自国で生産できていたはずの製品やサービスも輸入に頼るようになったからである。
かつての日本では、携帯電話のほとんどが日本メーカー製だったが、スマートフォン(スマホ)の台頭にもかかわらず、ガラケー(従来型携帯)に固執したことでほぼ壊滅状態となってしまった。スマホはもちろんのことパソコンや家電など、日常生活に必要な工業製品のほとんどが海外製である。
これに加えて近年、特に問題視されているのが海外IT企業に支払うソフトウエアの購入代金やクラウドサービスの利用料金など、いわゆるデジタル関連の赤字である。
クラウドサービスで太刀打ちできない日本企業
このところ、情報システムを自社で保有するのではなく、遠隔地にあるIT企業のデータセンターで運用を行うクラウドサービス市場が急拡大している。この分野で日本のIT企業は海外の企業にまったく太刀打ちできない状況となっており、多くのユーザー企業が毎年、高額の料金を払って外国企業にデータを預けている。
日本政府が情報システムをクラウド化しようと入札を実施したところ、要件を満たす企業が日本国内には存在せず、海外企業に政府のデータを預けざるを得なかったという笑えない話もあった。企業の基幹システムを構成するソフトウエアもほとんどがアメリカあるいはドイツ企業の製品であり、やはり海外に富が流出している。
為替市場では急速に円安が進んでおり、日本政府や産業界は危機感を募らせているが、円安が進む理由の根底には日本全体の競争力低下という問題がある。表面的には日米の金利差が最大の円安要因ではあるものの、日本だけが金利を上げられないのは、国内経済の基礎体力が弱く、急激な金利上昇に耐えられないからである。
過度な円安を防ぐには、日本の競争力強化が不可欠であり、そのためにはより積極的にIT投資を進めていく必要がある。日本企業のIT投資水準は30年間ほぼ横ばいが続いており、3倍以上に拡大させている諸外国との差は拡大する一方である。
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