コラム

人間の敵か味方か...グーグル検索を置き換える? 今さら聞けないChatGPTの正体

2023年06月02日(金)15時00分

グーグルがこれまで行ってきたビジネスやチャットGPTが取り組もうとしているサービスを総合的に考えると、今後、検索エンジンが急速に立場を失い、対話型AIが取って代わるというシナリオが十分に成立し得る。

そうなるとグーグルの時代以上に、マスにおける集合知が重要となり、ネット空間にどのような情報が飛び交っているのかによって私たち人間の行動が支配される新しい時代が到来する。この問題は全世界的な課題ではあるものの、とりわけネット空間の特殊性が指摘される日本の場合、事態は深刻かもしれない。

日本のネット空間を観察すると、特定サイトや特定人物の文言をコピーしたものの比率が高く、ごく一部の人の意見があたかも全体の意見であるかのように見えるケースが少なくない。

少し古い情報だが、総務省が公表した2018年版情報通信白書にネット利用をめぐる興味深い調査結果が掲載されている。同白書によると、日本人によるSNSの利用方法は極端に閲覧に偏っており、自ら情報を発信している人は少ない。

フェイスブックにおいて自ら積極的に情報発信を行っている日本人はわずか5.5%しかおらず、アメリカ(45.7%)、ドイツ(25.9%)、イギリス(34.9%)と比較すると大きな差がついていた。日本ではフェイスブックそのものがあまり普及しておらず、そもそも「利用していない」という人が過半数だが、利用している人の中での発信者の比率という点でも、日本は著しく低い。

他の媒体もほぼ同様で、ツイッターで積極的に発言している人は9%となっておりアメリカの半分程度しかいない。ブログ利用者の中で閲覧のみという人の割合もアメリカの2倍となっていた。

一方で、21年にはツイッター社(当時)に対する情報開示要求は全世界で日本が2年連続で最多となっており、利用者数で首位のアメリカよりも多い。

日本では特定の人がSNSで発信する割合が高く、かつネット上での誹謗中傷が最も多い国ということになる。

日本におけるSNS利用が偏っているのだとすると、ネット空間を飛び交う情報も少数の人によるものということになり、全体像を示していない可能性が高まってくる。AIをいかに管理するのかという問題が、特に日本社会において重要であることがお分かりいただけるだろう。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏とゼレンスキー氏が「非常に生産的な」協議

ワールド

ローマ教皇の葬儀、20万人が最後の別れ トランプ氏

ビジネス

豊田織機が非上場化を検討、トヨタやグループ企業が出

ビジネス

日産、武漢工場の生産25年度中にも終了 中国事業の
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 7
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story