政府による物価対策の給付金は「高齢者優遇」で不公平──批判は正しいのか?
YOSHIKAZU TSUNOーPOOLーREUTERS
<資産家で生活に余裕がある年金生活者も給付対象になっているとの批判もあるが、背景には適切な線引きを不可能にしている根本的な問題がある>
岸田政権が大規模な追加物価対策を決定した。主な支出は住民税非課税世帯への3万円の給付と、子供のいる低所得世帯に対する5万円の給付である。
一連の給付に対しては選挙対策のバラまきとの批判が出る一方で、低所得層だけでなく中間層にも給付が欲しいといった声も聞かれる。また、住民税非課税世帯で支給対象者を線引きすると、資産のある年金生活者にも給付が行われてしまうなど、不公平が生じやすいとの指摘もある。
政府は2023年3月28日の閣議で、物価対策を目的に22年度の予備費から総額2兆2226億円の支出を決めた。地方自治体向けの「地方創生臨時交付金」を1兆2000億円増額し、このうち5000億円を低所得世帯への3万円の支給に充当する。
ちなみに、地方交付税交付金は自治体の裁量に委ねられる予算であり、最終的な使途は自治体の裁量で決められる。一方、1551億円については、所得が低い子育て世帯に対する5万円の給付に充てる。
永田町では、早ければ5月の広島サミット後に解散が行われるのではないかとの声が飛び交っており、政界は完全に選挙モードに入っている。4月に入って多くの品目で値上げが行われており、何らかの対策が必要ではあるものの、現金給付になったのは、やはり選挙対策ということだろう。
現役世代が冷遇される不公平な給付?
加えて、一連の施策は高齢者を優遇しすぎていると批判する声も出ており、問題をさらにややこしくしている。
今回、給付対象となるのは住民税が非課税となる世帯であり、一般的に住民税非課税世帯は生活が苦しいと認識されている。その認識は正しいかもしれないが、住民税はあくまで所得に対する課税であって資産額は問われない。
つまり、資産を持つ年金生活者も給付対象となるため、現役世代と比較して不公平ではないかとの指摘が出ているのだ。
確かに、一定の資産を保有しているにもかかわらず、年収ベースでは年金しかないという高齢者は一定数存在しており、現状の枠組みではこうした人にも給付が行われることになる。ただ、マクロ的に見た場合、収入と資産は比例するものであり、相当な資産を持っているのに年収はごくわずかという高齢者は少ない。
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