コラム

インフレ長期化に勝つ方法はただ1つ...かつての日本はその「成功例」だった

2022年07月05日(火)19時27分

待っていても事態は改善しない

成長理論では、GDPの成長率を決めるのは資本と労働力とイノベーションの3つである。成熟国家において資本と労働力は急拡大しないため、必然的にイノベーションの寄与度が大きくなる。逆に言えば、継続的なイノベーションが見込めない場合、生産性を上げることはできず、インフレに勝つことも不可能ということになる。

結局のところ、企業の研究開発を促進したり、IT投資を強化することによって生産力を高める以外に方法はなく、これらの実現には時間がかかる。政治的には即効性がないので取り組みにくい課題かもしれないが、今回のインフレが長期化する可能性は高く、待っていても事態は改善しない。短期的な視点にとどまることなく、全体の生産力を拡大できる本格的な政策が不可欠となるはずだ。

この点について、与野党ともに十分な議論が行われているとは言えず、今のままでは場当たり的な対策を繰り返す結果となりかねない。目の前の物価対策を行いつつ、腰を据えた議論に踏み込めるのかがカギを握る。

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プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

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