インフレ長期化に勝つ方法はただ1つ...かつての日本はその「成功例」だった
GALEANU MIHAI/ISTOCK
<政府が打ち出しているインフレ対策は「場当たり的」な印象が否めないが、そもそも経済学的にはインフレ対策となり得る手段は限られている>
7月の参院選では、期せずして物価が最大の争点になるなど、インフレ対策が最優先課題となりつつある。インフレというのは厄介な現象であり、物価上昇を根本的に抑制する手段は限られている。継続的なインフレに打ち勝つには、どのような政策が必要なのだろうか。
今回のインフレは、原油や天然ガスなど資源価格が高騰していることに加え、円安によって輸入コストが上昇することで発生する「コストプッシュ・インフレ」と言われる。しかしながら、1次産品の価格が上昇しただけで、これだけ大規模なインフレが発生することは通常、あり得ず、背後には必ず貨幣的要因が絡んでいると考えたほうがよい。
今回のインフレにおける貨幣的要因が、各国が実施した量的緩和策であることはほぼ間違いなく、全世界的なカネ余りによって物価が上がりやすくなっていたところに、各種の供給制限が加わったことでインフレが進んだと考えるのが自然だろう。
こうした事態に対して、政府は石油元売り各社に対する補助金の支給や、小麦の政府売り渡し価格抑制策などいくつかの措置を講じているが、どれも場当たり的という印象は否めない。というよりも、本格的なインフレが起こっているときに打てる対策はおのずと限られてくる。
成功例は70年代の日本
経済学的に厳密な話をすれば、広範囲なインフレが発生したときに取り得る手段は2つしかない。1つは金利を引き上げ、あえて不景気にすることで物価上昇を抑制する方法。もう1つはイノベーションによって企業の生産力を強化する方法である。
前者を実施すれば、経済に極めて大きな悪影響が及ぶため現実的に選択しづらい。後者を選択し、供給制限がかかった状態でも従来と同等もしくはそれ以上の生産を実現できれば、供給曲線のシフトによってインフレを克服できる。
だが、企業の生産力を全体的に増強するのは並大抵のことではない。1970年代に発生したオイルショックをきっかけとするインフレでは、日本企業は省エネ技術などに先行投資を行い、イノベーションを背景に生産を拡大することでインフレを克服した。今回についても、鍵を握るのがイノベーションであることはほぼ間違いない。
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