コラム

「超大国化」を堂々宣言した中国に、日本は取り込まれるしかないのか

2021年03月16日(火)17時09分

CARLOS GARCIA RAWLINSーREUTERS

<全人代で公表された5カ年計画からは、超大国として世界に君臨する野心が明らか。世界一の経済大国という「隣国」と日本はどう向き合うか>

中国で第13 期全国人民代表大会(全人代)が開催された。採択された第14次5カ年計画では改革開放路線以来となる大きな政策転換が盛り込まれたほか、長期目標として1人当たりのGDPを中等先進国並みに引き上げるという目標も掲げられた。中国は超大国に向けて舵を切ったということであり、日本にとっては大きな脅威となるだろう。

全人代は中国の国会に相当する機関で、年1回、開催される。法律上は中国における最高権力機関と位置付けられているが、中国は革命国家であり、政府は共産党の統制下にある。現実には党の方針を追認する役割を果たしているにすぎないが、それでも全人代での決定は極めて大きな影響力を持つ。

特に今年は第14次5カ年計画が公表される年であり、諸外国はその内容に注目してきた。5カ年計画には新しい概念の「双循環」が盛り込まれたが、これは中国独特の用語で外需と内需を組み合わせるという意味である。

中国はこれまで世界の工場として各国に工業製品を輸出しており、製造業の設備投資で経済を回してきた。今後は輸出という外需に加えて内需、つまり国内消費も重視するという意味であり、これは中国がいよいよ内需拡大策に舵を切ったと理解されている。

現在の中国は日本の80年代

日本は1980年代、中曽根政権下で取りまとめられた、いわゆる前川リポートをきっかけに内需拡大に舵を切り、その後、社会は急速に豊かになった。このところ各国のシンクタンクの多くが、2030年頃に米中の経済規模が逆転し、中国が世界最大の経済大国になると予想している。

中国がこのタイミングで本格的に消費主導型経済を目指す方針を示したということは、中国がいよいよ世界の超大国として君臨するつもりであると宣言したことを意味する。

日本の内需拡大策は、バブルの後始末に失敗したことで事実上、頓挫してしまったが、中国は日本の経緯をよく研究している。今の中国はまさに日本の80年代であり、ある種の不動産バブル状態にあるが、共産党指導部はこれを軟着陸させ、最終的にはアメリカのような巨大な消費主導型国家の構築を目指している。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ロシアがICBM発射、ウクライナ発表 初の実戦使用

ワールド

国際刑事裁判所、イスラエル首相らに逮捕状 戦争犯罪

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部の民家空爆 犠牲者多数

ビジネス

米国は以前よりインフレに脆弱=リッチモンド連銀総裁
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 2
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 3
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 4
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 5
    「ワークライフバランス不要論」で炎上...若手起業家…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    習近平を側近がカメラから守った瞬間──英スターマー…
  • 8
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 9
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 10
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国」...写真を発見した孫が「衝撃を受けた」理由とは?
  • 4
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    建物に突き刺さり大爆発...「ロシア軍の自爆型ドロー…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶり…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story