コラム

コロナ不況の今こそ、再評価すべき「かつての不正の温床」とは

2020年09月02日(水)11時56分

NUTHAWUT SOMSUK/ISTOCK

<Go Toトラベルでも給付金でも、日本経済は救えない。現状にもっともふさわしい支援の仕組みとは>

新型コロナウイルスの影響で、2020年4~6月期のGDP成長率は戦後最悪となった。今回の下落はリーマン・ショックやオイルショックとは異質であり、影響は長期化する可能性が高い。

内閣府は8月17日、20年4~6月期のGDP速報値を発表した。物価の影響を考慮した実質成長率(季節調整済み)はマイナス7.8%、年率換算ではマイナス27.8%となり、リーマン・ショック後の09年1~3月期(年率換算マイナス17.8%)、オイルショック後の1974年1~3月期(同マイナス13.1%)を大きく超えた。

過去との最大の違いは、外出自粛によって個人消費が打撃を受け、これを引き金に主要項目が軒並み落ち込んだことである。個人消費はGDPの約6割を占める経済の屋台骨だが、前期比でマイナス8.2%もの下落となった。消費がこれだけ落ち込めば、企業の設備投資や輸出入、住宅の購入も停滞するので、ほぼ全ての項目がマイナスに転落してしまう。

リーマン・ショックは経済危機というより金融危機であり、取引先の資金ショートを懸念して一時的に企業活動がストップしただけだった。設備投資はマイナス6%、輸出もマイナス25.5%だったが、消費者の生活は維持されており、個人消費は0.5%のマイナスにとどまっている。

オイルショック当時は急激な製品価格の値上がりで個人消費が6%ダウンしたが、経済活動そのものは健全だったため、国民はすぐにインフレに慣れ、GDPも回復している。

「Go Toトラベル」の効果は不十分

今回は、以前のようにはいかないと考えられる。4~6月期の大幅下落は外出自粛の影響であり、今後、同じような措置が実施されなければ、ここまでの下落にはならないだろう。

だが国民の多くはコロナウイルスに対する強い警戒心を持っており、仮に政府が外出自粛を呼び掛けなくても、危機が完全に終息するまでは経済活動を控える可能性が高い。そうなると個人消費は当分の間、低迷が続く。

国民がコロナを警戒している以上、「Go Toトラベル」キャンペーンのような単純な需要喚起策を実施しても十分な効果は得られない。こうしたなかで経済を回復させるには、財政支援の在り方についての考えを変える必要がある。

【関連記事】
・日本の「財政破綻」は、本当にあり得ない? 政府債務のウソとホント
・大幅なマイナス成長の日本、生き残りへの選択肢は2つしかない

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

新型ミサイルのウクライナ攻撃、西側への警告とロシア

ワールド

独新財務相、財政規律改革は「緩やかで的絞ったものに

ワールド

米共和党の州知事、州投資機関に中国資産の早期売却命

ビジネス

米、ロシアのガスプロムバンクに新たな制裁 サハリン
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 4
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 5
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 6
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 7
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 8
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 9
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 10
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 6
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 9
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 10
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story