コラム

「近代」が崩れゆく世界で、日本の青年は民主主義を守れるか?

2024年01月23日(火)15時00分
成人式

どの世代にも型破りな人は一定程度いる(今月8日、横浜市) ANDRONIKI CHRISTODOULOUーREUTERS

<自分の権利を大事にし、人間らしい生活を目指すという基本は、日本の若者に刷り込まれているが......>

世界は大変動中。17世紀以来、西欧が紡いだ「近代」、つまり自由・民主主義の価値観やシステムが、西欧でのポピュリズム、アメリカでのトランプ台頭などでボロボロと崩れつつある。背景には、18世紀以来の産業革命で成立した工業がアジア諸国に流出し、民主主義の基盤だった中産階級が窮乏化したことがある。日本にしてみれば、明治以来の「近代化」、そして「民主主義を守るための」日米同盟体制とは何だったのか、ということになる。


今年、日本では106万人が新成人となる。「これからの日本を支える青年たちは大丈夫か? 混乱の中で方向を見失い、戦後の日本が手にした人権や民主主義を自ら捨て去りはしないだろうか?」と問いかけたくなる。自分たちの世代がこれまで何をしてきたかは、ひとまず棚に上げてだ。

大谷翔平のようなアスリート、外国語を駆使して世界でNPOの活動をする青年たち、そしてAI(人工知能)開発。最近の若手の先端部分は「すごい」の一言に尽きる。日本を突き破って、グローバルに活動している。しかし若者全員が大谷並みになったわけではないし、世代の先端部分が体制を突き破ってグローバルに活動するのは、科学・学問の世界では以前から見られた。今は起業が褒めそやされるが、若い頃の団塊世代の先端部分は革命家となって、日本の枠全体を壊そうとする気概があった。

一方、街で見る高校生・中学生は50年前とあまり変わっていない。小さい頃から偏差値で自分の居場所を固定され、大学に入ると3年生からもう就活。外国留学はおろか、ゼミナールで物事の見方、考え方を磨く時間もない。卒業するとその4月には、幼稚園よろしく一斉に、「入社式」とやらでおとなしく座っている。

国家は所詮、利権構造の集成

枠を破り新しい価値をつくり出そうとする者は、どの社会、どの世代でも、印象で言えば人口の3%前後だろうか。10%程度は、日本という体制の枠内で、エリートとして企業、政府を回していく人々。40%程度は体制の枠内で、勤勉に務めていく人たち。20%程度は体制に寄生して、できるだけ働かずに給料を得ようとする。この青年たちが日本の経済を活性化させ、日本の安全を守っていけるかどうか。

プロフィール

河東哲夫

(かわとう・あきお)外交アナリスト。
外交官としてロシア公使、ウズベキスタン大使などを歴任。メールマガジン『文明の万華鏡』を主宰。著書に『米・中・ロシア 虚像に怯えるな』(草思社)など。最新刊は『日本がウクライナになる日』(CCCメディアハウス)  <筆者の過去記事一覧はこちら

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

フィンランドも対人地雷禁止条約離脱へ、ロシアの脅威

ワールド

米USTR、インドの貿易障壁に懸念 輸入要件「煩雑

ワールド

米議会上院の調査小委員会、メタの中国市場参入問題を

ワールド

米関税措置、WTO協定との整合性に懸念=外務省幹部
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    【クイズ】2025年に最も多くのお金を失った「億万長…
  • 10
    トランプが再定義するアメリカの役割...米中ロ「三極…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 7
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story