コラム

裏金疑惑で安倍派は解体? 「政治とカネ」は各国共通の悩みの種

2023年12月15日(金)16時45分

日本では94年に小選挙区制が導入されて、選挙は候補者個人より政党を選ぶ色彩の強いものとなり、同年に政治資金規正法も改正されて、政党は国会での議席数に応じて政府から交付金を支給されることとなった。これで、個々の派閥、議員が資金集めに走って金権政治を招く弊害を除こうとしたのだ。自民党は今、年間約160億円もの活動費を国家から交付されている。野党第1党の立憲民主党は約68億円である。


これでは足りないのか、派閥や議員が資金集めのパーティーを開くのも、派閥が所属議員に配分するのもいいが、税金を払わず、収支報告書にも記載されていなかった、というのが今回の事件だ。

これは、税金を払い報告書を修正すれば、起訴は難しい。だから政治のプロにしてみれば、事件そのものより、悪質な裏金化が行われていたとされる安倍派の解体につながり、次期総裁選の見通しを流動化させるところまで行くのか、というのが注目点だ。

話を戻そう。政治資金はアメリカのように野放図に膨れ上がらないよう、そして政治を不健全、不透明なものにしないよう、ルールを定め、守らせることが肝心だ。ただ浄化一本やりも難しい。地元の冠婚葬祭で何もしない国会議員は、「付き合いの悪い人だ」と言ってはじかれてしまうから。

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プロフィール

河東哲夫

(かわとう・あきお)外交アナリスト。
外交官としてロシア公使、ウズベキスタン大使などを歴任。メールマガジン『文明の万華鏡』を主宰。著書に『米・中・ロシア 虚像に怯えるな』(草思社)など。最新刊は『日本がウクライナになる日』(CCCメディアハウス)  <筆者の過去記事一覧はこちら

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