コラム

プリゴジン「謀殺」はロシアの未来にどう影響するのか?

2023年09月05日(火)17時10分

しかし、ウクライナ軍が多方面で攻勢を開始した6月4日、局面は変わる。これからはロシア軍の出番で、ワグネルはもう不要。6月11日にショイグは、6月末までに傭兵を軍本体に吸収する布告を出した。

ここでプリゴジンとワグネルは、君側の奸であるショイグらを除かんと、モスクワへ強訴の行軍を始めたのだ。ワグネルは不要の域を超え厄介者、「何をするか分からない危険な存在」となった。プリゴジンはカネさえもらえば、要人暗殺もしただろう。

ということで、彼は8月23日に墜死する。クレムリンに都合の悪い者の墜死はソ連崩壊後、何度か起きている。プリゴジン事件でクレムリンが崩れる気配は、まだ見えない。ワグネルは政府からのカネが途絶えればもう成り立たない。

怪僧ラスプーチンがエリート層に疎まれて暗殺されたのが1916年12月。ロシア帝国はその後1年ももたずに革命で倒され、国は内戦の混乱に陥っている。「ラスプーチン」はロシア語で崩壊を意味する。「追従」を意味するプリゴジンの死は、ラスプーチンほどの意味を持つかどうか。

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プロフィール

河東哲夫

(かわとう・あきお)外交アナリスト。
外交官としてロシア公使、ウズベキスタン大使などを歴任。メールマガジン『文明の万華鏡』を主宰。著書に『米・中・ロシア 虚像に怯えるな』(草思社)など。最新刊は『日本がウクライナになる日』(CCCメディアハウス)  <筆者の過去記事一覧はこちら

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