「そして誰もいなくなる」日本の官僚
中央官庁からの人材流出が懸念されている STANISLAV KOGIKUーSOPA IMAGESーLIGHTROCKET/GETTY IMAGES
<個人的な要求が通らないと予算承認を妨害してくる議員、役人を怒鳴りつけてせいせいしたいだけの人々......社会が変わらなければ官僚の仕事も変わらない>
中央官庁の官僚に早期退職者が増えている。自己都合で退職した20代の総合職は2019年度には86人。13年度は21人だった。昨年9月、河野太郎デジタル相は、中央官庁の人材流出に危機感を示し、「霞が関の崩壊が始まっている」と述べた。政治家、マスコミに罵られながらの連日の超過勤務では、やる気も湧かず、家庭も成り立たないというわけだ。
そこで政府は、まず勤務条件の改善に取りかかった。人事院の研究会は、勤務終了後から開始までに原則11時間の間隔を義務付ける案などを提案した。だが、役人OBとして、そのような措置は実現できない、と思う。夜中の3時に退庁して数時間寝た後、9時には登庁することもある職場で、11時間の休息!? それより、勤務時間が長くなる理由を分析して改善する──こういう姿勢でなければ物事は動かない。
背景には、日本が連絡と調整を重視する社会なので国会議員などに「ご説明」する機会が多いこと、国会では議員が大臣などと大所高所の議論をするのではなく(欧米の議会では大抵そうなっている)、細部を答えさせて揚げ足を取ろうとする場合が多いこと、予算作成時期には財務省主計局の主査クラスから資料の提示を夜中でも至急に求められることなどがある。
それぞれ必要なことだ。財務省も少人数で予算請求を精査しているので、きれい事は言っていられない。しかし非合理なことも数多い。省庁の課長級を説明に呼び付けたことで得意になる議員、首相や大臣が国会での質疑応答で立ち往生しないよう(一晩での)資料作成、翌朝早くの説明は日常茶飯事。自分の抱える案件に予算が付かないと困るので、夜遅くまで待機し、主査から電話があれば飛んで行く。所定の超過勤務手当は出ない。
官僚は永遠の存在ではない
それでも、役に立つこと、面白いことで超過勤務するなら構わない。外務省の場合、交渉事や要人の外国訪問の前は事務が集中するので、課長は椅子の上、課員は事務机の上やソファで仮眠するのはざら。それでも懸案が片付けば達成感があったものだ。
嫌だったのは、個人的な要求が通らないと外務省予算の国会承認を妨害したり、省庁幹部にねじ込んで担当者の更迭を迫る議員。あるいは、一部で不正を働く役人が発覚すると、省全体で不正をしているかのように決め付けられ、罵られることだ。
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