日独の悲哀「敗戦国はつらいよ」
戦車供与の決断が遅れたショルツ首相は批判にさらされた AGUSTIN MARCARIANーREUTERS
<日本もドイツも戦後長らく、戦勝国からの多大な圧力にさらされてきた>
ドイツは1月25日、その工業力の華、「レオパルト2」戦車をウクライナに供与することを決めた。アメリカも「戦車M1エイブラムズを供与する」と表明したが、これでロシアから「主要敵」扱いされ、ウクライナ戦争調停の権利を失うこととなった。
戦車があれば戦局が変わるものでもなく、今回ロシア軍はウクライナから横流しされた対戦車ミサイル「ジャベリン」を持っているという報道さえあったのだが、供与を渋るドイツはNATO内部で孤立。ロシアの天然ガスをドイツに輸送していたバルト海底パイプラインも爆破され、国内需要の実に40%以上の天然ガスを求めて世界中を走り回らされる羽目となった。
これを見て、「敗戦国はつらいよ」とつくづく思う。軍事力を低い水準に抑え込まれているから発言力は限られるし、道理を言っても、最後は戦勝国からの圧力でつぶされる。1982年のフォークランド紛争(アルゼンチンが自国沖の英領フォークランド諸島を占領してイギリスと戦争になった)では、英米から「西ベルリンの安全は誰が守っていると思っているんだ?」という露骨な圧力を受け(冷戦中、東ドイツ領内の陸の孤島西ベルリンは英米仏の「連合軍」に守られていた)、イギリス支持を表明せざるを得ない羽目になっている。
筆者はこの時、外交官として西ドイツに勤務していたのだが、西ドイツの外務省員ははらわたが煮えくり返るといった形相だった。
日本も抱える敗戦国のジレンマ
92年、日本との関係を改善して資金をせしめようと考えたロシアのエリツィン大統領は言った。「ロシアは(ソ連と違って)、戦勝国・戦敗国の立場を離れて、日本との関係を推進する用意がある」と。戦後世代の筆者などは、「え! そんなふうに日本を見ていたのか」と思って驚愕したものだが、残念ながら、こうした見方はロシア人だけではない。肝心のアメリカがそうだし(日本が過度な依存を続けるからだが)、マッチョのアラブ人も「原爆を投下されながらアメリカに付き従っている」日本をなめている。外交官をやっていると、時々「この野郎」という気持ちにさせられたものだ。
しかし日米安保は端的に言えば、戦後占領体制の終了を求めた日本に、「米軍基地付きなら独立を認める」ということで結ばれたものだ。そして日本人が今、平和のための金科玉条とする憲法第9条は、敗戦国の武装解除を憲法条文にしたものとも言える。日米安保は60年の改定で少しはましになったが、戦後の日本は「敗戦国」体制に自らの意思、そしてソ連などによる工作でどっぷりとつかってきたのだ。
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