コラム

「専制国家・中国」にトリセツあり

2023年01月25日(水)15時30分

それにわれわれは、日本が民主主義国だと思っているが、西欧諸国などに比べるとまだまだ武家支配時代の権威主義の殻を背負っていて、社会は暗黙の身分の序列で回っているところがある。それに役人は、社会やマスコミ、そして国会に責任を問われることを何より恐れる。その結果、責任逃れの報告を首相官邸に上げ、「諮問委員会」や「計画」をつくって仕事をしたことにし、ひどいときには書類の改ざんに手を出す。中国を専制主義国家だと見下す前に、日本にも直すべきことはたくさんあるのだ。

台湾情勢、日本の防衛予算増加など、日中関係はじりじりと後退している。外交では、相手の侵攻を牽制する「抑止」と同時に、話し合いのチャンネルを維持し、協力にメリットがある分野では協力関係も進めるのが大原則。ブリンケン米国務長官が近く訪中を考えているように、日中も首脳会談の実現へ歩を進めるべきだ。そのとき、コロナをめぐる規制を相互に緩和すれば、成果の1つにもなる。

「中国は専制主義だ。けしからん」と言うだけではなく、その癖を心得て、うまく東アジア安定の枠組みの中に組み込んでいかないといけない。

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プロフィール

河東哲夫

(かわとう・あきお)外交アナリスト。
外交官としてロシア公使、ウズベキスタン大使などを歴任。メールマガジン『文明の万華鏡』を主宰。著書に『米・中・ロシア 虚像に怯えるな』(草思社)など。最新刊は『日本がウクライナになる日』(CCCメディアハウス)  <筆者の過去記事一覧はこちら

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