コラム

「一度手に入れたものは返さない」ロシア──日本に求められる「普通」の外交

2022年10月20日(木)15時13分

日ロ関係もいつかは回復に向かうだろう。その時、北方領土問題をどうするか。経験が示すことは、ロシアが困窮すれば問題は動きはするが解決はしない、ということだ。領土問題が本当に動くのはロシアが分裂、あるいは日ロが戦略的な提携関係に入った時くらいなものだ。

だがロシアが分裂すれば北方領土は返ってくる、といういたずらな期待を持つべきではない。分裂した相手に領土を譲らせても、統一を回復すれば合意をひっくり返してくる。

だから日本にとっての王道は、「四島返還要求の旗は降ろさない。一方、日ロ双方の利益になる協力は進める」ということになる。過去の記憶が薄れるにつれ、「こんな島などロシアに譲ってしまえ」という声が国内で強くなってくるだろう。

それを説得し(譲って何のプラスになるのか)、粘り強く問題解決を要求し続け、かつ日本に役立つ協力関係は進める──こうした巧妙な、しかし世界ではごく普通の外交を日本人はできるだろうか?

プロフィール

河東哲夫

(かわとう・あきお)外交アナリスト。
外交官としてロシア公使、ウズベキスタン大使などを歴任。メールマガジン『文明の万華鏡』を主宰。著書に『米・中・ロシア 虚像に怯えるな』(草思社)など。最新刊は『日本がウクライナになる日』(CCCメディアハウス)  <筆者の過去記事一覧はこちら

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