安倍元首相の国葬を「日本国の葬式」にしないために
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安倍元首相亡き後の空白を埋めることができる政治家はいない YOSHIKAZU TSUNOーGAMMA-RAPHO/GETTY IMAGES
<アベノミクスの「魔術」が消えた今の日本は、昭和の戦前とうり二つ>
9月27日は安倍元首相の国葬である。19日のエリザベス英連合王国女王の国葬と違って、賛否両論で騒然そのものだが、それは日本の首相が国家元首ではないからだ。
首相は、議会での多数決で選ばれた「行政府の長」にすぎず、国民全体を代表する「日本の元首」は天皇。戦後、米占領当局との妥協で、憲法では「象徴」という、よく分からない称号になっているが、その意味は紛れもない元首(Head of State)だ。
だから安倍元首相の特別の功績をたたえるなら、内閣・自民党合同葬がふさわしい。外国の賓客は、別に国葬でなくても来るだろう。賓客を接遇する費用が膨大で自民党では負担できないから国葬にしたのが実情なら、それは本末転倒だ。
外国との関係では、今回参列した外国首脳のうち何人が、日本を再訪してくれるだろう。今の日本のありさまを見ていると、この国葬は読んで字のごとく、まさに「日本国のお葬式」になりかねないと思う。
金利引き上げの是非で揺れる今の日本は、金本位制離脱の是非で揺れた戦前日本とうり二つ。そして生活上の不満から、首相等要人の暗殺が相次いだのも、昭和の戦前だった。
7年半続いたアベノミクスはドーピングのようにカネ余りで経済を膨らませはしたが、今はその落とし前を払う時。アメリカの大胆な脱ドーピング作戦(金利の急速な引き上げ)に抜け駆けされた日本は円安に陥った。このままドーピングを続けて円安インフレになるか、金利を引き上げて円を守るも、デフレ・不況の再来を招くか、どちらがいいかと聞かれても困ってしまう状況だ。
ポピュリズムの魔術は消える
ソ連の作家ブルガーコフの『巨匠とマルガリータ』という有名な幻想・風刺小説では、魔術師が劇場の聴衆に豪華な服をプレゼントするが、彼らがはしゃいで劇場を出ると、下着一枚に変身する場面がある。
今の日本はこれに似ている。「異次元緩和」で好況を演出し、若年層の就職状況を大いに改善し、その勢いで立派な戦略的外交を展開したが(北方領土問題は除く)、その権力は旧統一教会などの勢力に大きく支えられていた。これは国ぐるみの魔術、いやモラルハザードなのだ。
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