毛沢東の外交は味方よりも多くの敵を生み出す「唯我独尊」だった
だが、ほかならぬ習近平(シー・チンピン)は文革時代に16歳から7年間も農村に下放され毛沢東思想を徹底的にたたき込まれたため、そのあたりの機微が分からない。
これだけ中国が強くなった今は、アヘン戦争で失った国際的な威信を取り戻すとともに、浮ついた西側文化を国内から一掃する好機だと思っている。
それは中国自身にとっても非常に危険なことだ。なぜなら中国経済の足腰は実は脆弱で、外国の資本や技術が引き揚げれば経済は逆回転を始める。
加えて習政権は民営ビジネスへの規制を強めて、その活力を奪ってもいる。国王の強い力の下で政府主導の工業化を実現しようとした18世紀のフランスは、民間活力主導のイギリスに敗れたし、20世紀のソ連の計画経済は国民の消費欲を満足させられずに滅びた。そのことを習近平はどう思っているのだろう?
筆者が外交官だった頃、「毛沢東に洗脳されてマルクス主義のバーチャルな世界がリアルだと思う文革世代が中国を動かすようになる時が心配だ」と、ある中国の識者も言っていたが、今その時がやって来た。これが世界、そして日本にとって吉と出るか凶と出るか──。
中国にとっては、多分凶なのだろう。
2024年4月2日号(3月26日発売)は「生存戦略としてのSDGs」特集。サステナビリティの大海に飛び込んだ企業に勝算あり。その経営戦略を読み解く。[PLUS]初開催!SDGsアワード
※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら
ウクライナでロシアとNATOは直接対峙するか? 2024.03.09
南海トラフ巨大地震で日本を失わないために 2024.02.20
「トランプの逆襲」で世界はどうなる? 2024.02.08
「近代」が崩れゆく世界で、日本の青年は民主主義を守れるか? 2024.01.23
2024年、ウクライナ停戦で世界は変わるか 2024.01.12
令和の時代に昭和の政治......首相は実は誰でもいい 2023.12.26
「リベラルかつ強権」私がこの目で見た、中央アジア最強国ウズベキスタンのミルジヨエフ大統領 2023.12.25