米中対立時代のサバイバル術──日本流「二股」戦術も限界か

中国工場で製造される輸出用ボルボ車(中国・黒竜江省大慶) REUTERS
<米政権の関税引き上げで中国の「輸出基地」モデルは終焉――それでも13億人の巨大市場の吸引力は断ち切れない>
90年代、冷戦終結で世界経済は一つになった。すると中国が巨大市場と低賃金労働力を引っ提げて、世界の資本を掃除機のように吸い込み、瞬く間に「世界の工場」と化した。
日本など外資系企業は自国から中国工場に機械や部品を輸出し、安く組み立てた製品を欧米に再輸出するビジネスモデルに夢中となった。今でも中国からの輸出の半分近くは、外資系企業によるものと言われる。
このモデルはアメリカに2つの問題をもたらした。1つは対中貿易赤字が過大になったこと。もう1つは中国が先進国の技術や部品、機械を使って最新鋭の兵器を開発し始めたことだ。アメリカがつぎ込んだカネで中国は経済成長しただけでなく、軍事でもアメリカに挑戦してきた。
そこでトランプ米大統領は対中貿易赤字を減らすために、関税引き上げで脅す。米国防総省は中国を「ロシアと並ぶ主要な脅威」と言い立て、先端技術の輸出制限を主張している。
実際にトランプが関税率を上げようが上げまいが、米中対立以後、「中国の対米輸出は今後どうなるか分からない」という不信が外資系企業に芽生えた。「中国イコール輸出基地」モデルはもう過去のものになったのだ。日本の対中直接投資は既に12~17年に約6割も減少し、33億ドルを切っている。なかでも製造業の直接投資が減少している。
ソ連にさえプラント輸出
さらに対中制裁の強化によって、半導体製造技術・製造機械、そして最先端性能の部品の輸出が一層制限される。中国は今でも半導体の大半を外国から輸入しており、国内で使用する半導体の15%以下しか国産化できていない。その国産品の多くも、日米欧から輸入した機械がないと生産できない。
冷戦時代はココム(対共産圏輸出調整委員会)と称する西側諸国間の紳士協定で、対共産圏向け輸出を制限するべき技術や製品を決めていた。今では米政府が一方的に決め、これに違反した第三国企業には対米輸出を禁じるなどの制裁措置を講じることとすれば、アメリカの決定がそのままグローバルに適用されてしまう。こうした制裁対象の分野で中国は最先端の製品を作れなくなるだろう。
こうなると、先進国の対中輸出はかなり減る。中国工場での製品組み立て用の部品や機械が対中輸出の大半を占める日本もそうだ。現在、対中輸出依存度(香港を含む)が対米依存度を上回る日本は、「中国経済がくしゃみをすれば肺炎になる」と言われている。
だが、組み立て拠点を中国からアメリカや日本、あるいは第三国に移してしまえば、対中輸出は減っても日本の輸出総額は維持できる。数年の時間はかかるだろうが。「中国・深圳のものづくりサプライチェーンは他をもって代え難い」とも言われるが、日本にも東大阪や東京に「何でも作れる」中小企業の集積地が以前から存在している。
領土は売買できるもの――「トランプ新世」の価値観に対応せよ 2025.03.28
アメリカの対中優位は揺るがないのか......「旧友」ジョセフ・ナイ教授との議論 2025.03.15
ウクライナ停戦は世界のパラダイムシフトを引き起こすのか 2025.02.28
日本でも世界でも、公共事業で整備された近代インフラは老朽化でもう限界 2025.02.14
ゼレンスキー主演『国民の僕』あらすじから占う、2025年ウクライナ情勢と停戦後の命運 2025.02.01
駐留米軍は本当に必要なのか? 戦後80年の日米関係を棚卸しせよ 2025.01.14
-
リモートワーク実施/土日祝休/残業少/外資系企業のアウトソーシング事業の税務シニアスタッフ
アークアウトソーシング株式会社
- 東京都
- 年収480万円~624万円
- 正社員
-
品川本社/ベンダーファイナンス営業 大手外資系ICTベンダー/業界未経験歓迎・リモートワーク可
NECキャピタルソリューション株式会社
- 東京都
- 年収400万円~630万円
- 正社員
-
東京都港区/外資系企業での一般事務・庶務業務
日本アスペクトコア株式会社
- 東京都
- 月給22万700円~
- 正社員
-
「東京」外資系投資銀行のチーム秘書/土日祝休/年収350万円〜/コミュ力活かせる
グローブシップ・ソデクソ・コーポレートサービス株式会社
- 東京都
- 月給25万円~30万円
- 正社員