金沢の「尹奉吉記念館」問題を考える
地元の努力が無になるなら本末転倒
今回問題となっている尹の「記念館」設置運動は、必ずしもこれらの人々の活動の延長線上にはない。中心となっているのは、韓国国営放送KBSでプロデューサーを務め、現在はユーチューバーとして活躍する人物で、現地の在日コリアンや市民団体と連携はない(この人物は、尹の記念館や追悼館ではなく日韓交流の歴史を紹介する施設だと日本メディアに説明している)。
「記念館」の設置が予定されているのも金沢市内ではあるが尹との縁のない場所で、地域住民は困惑している。大韓民国居留民団(民団)も、「地域の理解を得ることなく賛同できない」と反対声明まで出している。右翼運動家と目される人物の軽自動車が民団の建物に突っ込むなど、金沢の人々に対する抗議活動が激化していることが、その背景にはある。
「南部の正義」に関する記念碑や施設が異なる価値観の北部で造れないように、歴史の顕彰活動では常に地元の人々の理解が不可欠だ。本国からの「落下傘」的な活動で現地の人々の努力が無に帰するなら、本末転倒も甚だしいと言わざるを得ない。

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