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若者ばかり損するイギリスの学資ローン地獄
そこで国家の負担から「受益者」の負担へと移ったわけだが、それ自体は筋が通っている......大量に誕生する新世代の大卒者にどの程度の受益があるのかは不明、という点を除いては。ブレア政権下で高報酬の職は大卒者の増加に見合うほどには増えず、多くの大卒者が高卒で就けたような職に就いた(3年遅れで、5万ポンドの借金を背負って)。
もちろん、悪い面ばかりではない。教育の拡大は多くの貧しい家庭出身の人々の可能性を広げる。大学教育の価値を、粗野な金勘定だけで計るべきでもない。深い興味を抱く分野を学び、広い関心を持った思慮に富む人物になるのなら、人生の価値ある経験になったといえる。若者たちは「キャンパスライフ」を味わいたい、と口々に言うようだが、それが「パーティー三昧の3年間」を意味するのでないことを祈るばかりだ。
その貴重な大学経験のために高い代償を払うのは学生だけではない。僕たちの社会も払うのだと思う。格差が深刻化すると、社会契約は成り立たなくなる。イギリスにはどの時代だって「富める者と貧しい者」がいたが、僕たちはそれを福祉や累進税、公平性を図る政策で改善してきた。だが「年配者と若年者」の格差には無関心すぎたようだ。
無償で大学教育を受けて20代や30代で家を買うことができ、資産を築いた世代は、当然ながら、重い借金を背負い今後も家を買える見込みすらない世代から怒りを向けられている。僕自身は経済的な不安を抱えているものの、彼ら締め出された若者世代に比べればまだ幸運だと感じてしまう。
この学資ローン制度を擁護する人々は、これを事実上の「大卒税」だと言う。この制度では卒業後、年収が2万1000ポンド(約335万円)に達した時点から、その額を超える所得の9%が徴収される(これもまた数年前に改正された「マイナーチェンジ」によって、返済が猶予される年収額の上限が2万7000ポンドから引き下げられた)。
だから程よい稼ぎの職に就けていない人はローン返済の必要がないし、反対に大学教育のおかげで高給の仕事に就けた人はかなり簡単かつ早期にローンを完済する。とはいえ、その中間に位置して長期にわたり高い金利で返済を続ける大卒者が大多数だということを、政府もよく把握している──学資ローンを多額の出費ばかりの赤字制度にするわけにもいかないのだから。
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