コラム

いつか来る(かもしれない)災害に本気で備えることの難しさ

2021年02月17日(水)15時45分

英政府が大雪に備えていない理由の一端を知りたければ、イギリス人にスノータイヤを持っているかどうか聞いてみるといい。イギリス人が、特定の地方部を除いて、ほとんど誰ひとりとしてスノータイヤを持っていないのは、これまで必要になったことがほとんどないからだ。

もちろん、雪の多い冬でも、主要道路に支障がない程度の滑り止めの砂は、イギリスも常備している。今年、予期していなかった事態の1つは、ロックダウンによる交通量減少で、こうした主要道路が危険な状態のままになってしまっていることだ。砂を道路に拡散させるために通行車両が大きな役割を果たしていたことが明らかになったわけだが、「WFH(ワーク・フロム・ホーム)」と不要不急の外出制限のおかげで毎朝、道路の雪が解けるまでにいつもより長い時間がかかるようになってしまった。

今の世界は、はかない期待に基づいて予測が立てられては、それが次々と覆されている。コロナウイルスは、明らかで極端なケースだ。専門家はこうした感染症がいつか出現する可能性を予期していたし、当局に警告を発していたものの、それがいつ、どんなふうに、どの程度ひどい状況で起こるか正確には分からなかったから、多くの資源を費やして備えたり関心を向けたりはしてこなかった。

今思い返せば、あれはばかげていたように思える。もう少し備えていれば、経済も多くの命も失われずにすんだだろう。

プロフィール

コリン・ジョイス

フリージャーナリスト。1970年、イギリス生まれ。92年に来日し、神戸と東京で暮らす。ニューズウィーク日本版記者、英デイリー・テレグラフ紙東京支局長を経て、フリーに。日本、ニューヨークでの滞在を経て2010年、16年ぶりに故郷イングランドに帰国。フリーランスのジャーナリストとしてイングランドのエセックスを拠点に活動する。ビールとサッカーをこよなく愛す。著書に『「ニッポン社会」入門――英国人記者の抱腹レポート』(NHK生活人新書)、『新「ニッポン社会」入門--英国人、日本で再び発見する』(三賢社)、『マインド・ザ・ギャップ! 日本とイギリスの〈すきま〉』(NHK出版新書)、『なぜオックスフォードが世界一の大学なのか』(三賢社)など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米労働生産性、第1四半期速報値は0.8%低下 約3

ワールド

新ローマ教皇にプレボスト枢機卿、初の米国出身 「レ

ビジネス

米新規失業保険申請1.3万件減の22.8万件、予想

ワールド

トランプ氏、米中高官の貿易協議を楽観視 対中関税「
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 2
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 3
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 4
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 5
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 6
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見.…
  • 7
    シャーロット王女とスペイン・レオノール王女は「どち…
  • 8
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 9
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 10
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story