コラム

英空軍はイギリス人が今も熱狂する第2次大戦の英雄

2018年07月25日(水)18時40分

だが、戦争の最終局面でドイツの数々の都市を廃墟にした「RAF爆撃機コマンド」は、当然ながらあまり祝福されていない。これらの攻撃で、多数のドイツ市民が犠牲になり、中でも最も有名なのがドレスデン空爆だった。

それでも今ではロンドンに爆撃機コマンドの兵士らの記念碑が(2012年までに)設置されたし、彼らを率いたアーサー・「ボンバー」・ハリスの像も建てられている。彼らの死亡率は特に高く、戦後に心的外傷後ストレス障害(PTSD)に悩まされた兵士も多かった。

RAFの話にはいくぶん神話的な部分もある。バトル・オブ・ブリテンでは、言われているほど状況は不利でなかった。ドイツ戦闘機は低品質だったし、RAFは高性能レーダーを備えていたので襲来するドイツ軍の位置を把握できたし、イギリスはドイツよりも迅速に戦闘機を補充できたし、仮にRAFが敗れても英海軍がドイツの侵攻を止められただろう。それに、第2次大戦の中でのRAFとバトル・オブ・ブリテンの重要性をそこまで強調するのは、すごく「アングロ(英国)中心的」な戦争観だ。

それでもなお、あの当時は僕たちの国が存続の危機に直面し、自由が脅かされた時だった。だから、イギリス人がRAFのバースデーを祝いたいと思うのは、自然なことなのだ。

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プロフィール

コリン・ジョイス

フリージャーナリスト。1970年、イギリス生まれ。92年に来日し、神戸と東京で暮らす。ニューズウィーク日本版記者、英デイリー・テレグラフ紙東京支局長を経て、フリーに。日本、ニューヨークでの滞在を経て2010年、16年ぶりに故郷イングランドに帰国。フリーランスのジャーナリストとしてイングランドのエセックスを拠点に活動する。ビールとサッカーをこよなく愛す。著書に『「ニッポン社会」入門――英国人記者の抱腹レポート』(NHK生活人新書)、『新「ニッポン社会」入門--英国人、日本で再び発見する』(三賢社)、『マインド・ザ・ギャップ! 日本とイギリスの〈すきま〉』(NHK出版新書)、『なぜオックスフォードが世界一の大学なのか』(三賢社)など。

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