極右政党を右派ポピュリズムへと転換させたルペンの本気度(前編)
注目のフランス大統領選は、第一回投票日が近付いている Gonzalo Fuentes-REUTERS
<投票が近づいたフランス大統領選の選挙情勢を概観する前編。現職オランドは、付加価値税(日本の消費税)の引き上げで総スカンをくらった>
昨年はブレグジット国民投票、トランプ政権の誕生と「まさか」の連続だったわけですが、二度あることは三度あるかもしれない?ということで、間近に迫ったフランスの大統領選につきまして。
お恥ずかしい限りですがワタクシは一切フランス語がわかりませんし、仏文化への素養もほぼ皆無という状態だったにもかかわらず、最近になってフランス情勢に触れるようになったのは、ほかでもない平素何かと活動をともにしている堀茂樹・慶応大学名誉教授のおかげです。
もともと欧州関連の良質な情報が圧倒的に少ない情況下で、今回の仏大統領選の話題にしても国内メディアで取り上げられる内容は極めて限られているわけですが、3度目の「まさか」の可能性が出てきた現状、取り敢えず把握しうる限りの正確かつ最新のフランス情報が渇望されている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで、今回の内容は先日開催された市民のための勉強会である「オイコスの会」(堀教授とともに共同代表を務めております)での堀教授の講義「2017年のフランス共和国大統領選挙」の概略をお伝えできればと思います。
トゥール・ド・フランスでご覧の通り、フランスの国土は山あり平野ありの六角形をしています。その中心の上寄りにパリがあり、面積としては日本より広いですが、人口は日本の約半分の6500万人となっています。
単一民族ではなく、オリジンは様々という意味では少し米国に似ていると言えるかもしれません。六角形の国土の右上からベルギー、ドイツ、スイス、イタリア、下には地中海、左下にスペイン、海峡をまたいで英国にぐるっと囲まれています。
【参考記事】大統領選挙に見るフランス政治のパラダイムシフト
社会文化的に、パリを含む上から下までの中央部分のベルト地帯(人口・面積の2/3を占める)と、それ以外の周辺地域では様相がかなり違っており、エマニュエル・トッド氏の言葉を借りれば中央ベルト地帯は「南米っぽい」、平等主義でヒエラルキーに屈しない気質。それ以外の周辺地域は「ドイツっぽい」気質でどちらかと言えば日本的でもありお堅いとのこと。
つまり、非常に保守的なところでそうでないところがフランスにはあり、多様であるがゆえに一体感と分裂とに揺れやすくもなります。ちなみに、外資系の工場などが生産拠点を移してきて上手く稼働、定着するのは周辺地域だそうです。
統治形態は民主主義ですが、国家の体制は国王や天皇のいない共和制を敷いています。英語で共和制は「republic」ですが、public=「公」、reはラテン語のRes=「もの」であり、語源を辿れば「公のもの」との意味になります。特殊利益よりも公共の利益に重きを置く発想です。現在は第五共和政(1958年の国民投票により承認された新憲法で成立、ドゴールが大統領へ。王権を停止した1792年から第一共和政がスタート)で、政教分離を原則としています。
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