税制論議をゆがめる安倍政権の「拝外」主義
安倍首相は今月、アメリカの著名経済学者3人を招致して意見聴取した(写真はクルーグマン米プリンストン大学教授) Franck Robichon-REUTERS
ちょうど国際金融経済会合のためスティグリッツ教授が来日したので、国内報道はそちらがメインになるかと思いきや、あにはからんや。経済分野でのコメントも活発になさっていた方の経歴詐称の話題で持ち切りだったようで。スピン・コントロールとは思いませんが、結果的には海外の名前や海外の「権威」を安易に受け入れたり、心酔したりすることに水を差す展開へと感じたのはワタクシだけでしょうか。
ざっとではありますが主要各紙を確認しました。総じて、スティグリッツ教授の発言の都合の良いところを「つまみ食い」した印象は否めません。また、続くジョルゲンソン教授、クルーグマン教授の主張についても国内報道では正確に伝わっていないのではないか?との疑念が払拭できずにいます。
財政出動要請の他にも、金融政策の有効性(マイナス金利も含む)の否定、量的緩和政策による不公平の拡大(通貨切り下げ策=円安効果への疑問)、賃金体系の見直し、社会保障の充実、格差是正、日本の成長戦略への伝統的アプローチである個別産業への補助金政策の否定(現状の政権がすすめる地方創生も補助金ありきですから、その否定になりますね)、TPPに関しては自由貿易協定とは名ばかりであるがゆえに反対あり、農協の影響力の弱体化・農業改革・岩盤規制撤廃のススメと絡んで賛成あり。実に示唆に富んだ多岐に渡る指摘が各教授からあり、こうした海外の「権威」の主張を聞かない理由はありません(聞いた上でどう判断するかが我々の問題)。官邸HPにご用意下さった実際の資料が紹介されていますので、是非皆さまご一読をおススメいたします。
なおクルーグマン教授の資料はなしとのこと。であるなら、会合の音声データのアップや文字起こしぐらいは掲載してくださってもよいものなのに。会合のメンバーだけでなく国民全体にとっても貴重な御意見ですし、招致の資金も元を辿れば我々の血税。オープンにしていただいて然るべきかと思います。ところで、報道発表を官邸に都合の良い内容だけと糾弾する皆さんもスティグリッツ氏のコメントの抽出だけに終始しているようですが、ジョルゲンソン教授の指摘もクロースアップして見るべきではないでしょうか。それこそ都合の良い話になってしまいます。
取り上げたいテーマはいくつもありますが、取り敢えず消費税を。ご承知の通り、ワタクシは消費税増税に反対どころか、内需主導の日本経済にとってあまりに悪影響がすぎる消費税制度そのものに反対。かねてから消費税は増税ではなく減税→廃止へと訴えてきたものですから、消費税増税に反対を示されたスティグリッツ、クルーグマン両教授からのフォローの風は官邸ならずとも大歓迎!!と言いたいところではありますが......手放しに喜ぶわけにはいかない点についてもフェアに指摘して参りましょう。
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