税制論議をゆがめる安倍政権の「拝外」主義
資料をご覧いただいてお気づきの通り、実はお二人とも「消費税」と明言した記述はありません。増税反対のお二方も、賛成とされたジョルゲンソン教授もあくまでも会合内、あるいは会合後の記者会見の場でそれぞれ発言した内容として伝えられたものに過ぎません。
なぜ、自身の資料に明確に記載をしないのか。以前の寄稿でも触れました通り、一国の税制は国家の主権と深く関わっています。したがって、国外から税制の指摘をすれば、これは過剰な内政干渉と見なされるのがいわば国際通念。国際人である各教授がこうした通念を意識するのは容易に想像できます。あくまでも個人の主張との位置づけではあっても、日本政府からの招致である以上、内政干渉となりうる税制問題に賛成・反対といった記載を資料の中ではっきりと残すことを避けた、というのは当然の判断と言えましょう。
ちなみに、増税判断は5月の主要7カ国(G7)首脳会議(伊勢志摩サミット)でなされるといった報道がありますが、これもおかしな話です。内政干渉の問題がある以上、日本の消費税が国際会議の議題に上るはずもないのですが、仮にサミットで議題になり、消費税見送りへとの意見が多数を占めることになったとしましょう。これは消費税増税に賛成・反対以前の問題として、日本国の主権の侵害ですから日本政府は各国の過剰な内政干渉に対して毅然とNOを突き付ける必要があるのです。こうした指摘は消費税増税派にとっては喜ばしいはずで、なぜ岩本がわざわざ敵に塩を送るようなことを書くのか?と反対派からは思われるかもしれませんが、ここはフェアに。
「G7で増税に反対してくれるのだから良いではないか」、というお声が聞こえてきそうですが、それとこれとは全く次元の違う話。というのも、これを良しとしてしまえば、逆に各国から消費税増税せよと言われれば日本は消費税を上げるのですか?という問題が出てきます。国際会議でも国内政策でもその場凌ぎの「いいとこ取り」だけをする訳には参りません。
サミットで消費税増税延期の話が出たなら、それが本当に議題の俎上に乗ったのか、そうではなく、G7後の会合の記者会見の場で、個人的見解としての発信なのかを見極める必要があります。伊勢志摩サミットはあくまでも国際的な経済、政治的課題について討議する会議であり、(サミットでの国際情勢報告が増税か否かをその後に判断するきっかけにはなっても)一国の税制を判断する場ではありません。日本で開催されるサミットで関連ニュースも多くなるはずです、一次情報については目を皿のようにしてフォローするようにいたしたいと思っています。
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