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ファクトチェックの老舗Snopesの剽窃事件の裏にある問題
ファクトチェックのパトロン、グーグルとフェイスブック
フェイスブックの広報担当者によれば、世界で70以上のファクトチェック機関と提携しているのは同社だけだそうだ(BuzzFeedNews)。影響力を増しているのは確かなようだ。
グーグルは、2018年にジャーナリズムへの支援で3年間でおよそ300億円を投じると発表した。ハーバード大学と共同でDisinfo Labを設立し、Poynter、スタンフォード大学、ローカルメディア協会と提携し、米国の若者のデジタル情報リテラシー教育を行う予定としている(The Washington Post)。こちらも影響力を増しつつある。
最終的な「ファクト」を決めるのはフェイスブック自身だった
フェイスブックのファクトチェックがどのように行われているかを見ると、その問題は明らかである。フェイスブックは数多くのファクトチェック団体にファクトチェックを依頼している。ファクトチェッカーはフェイスブックの投稿を確認し、問題があると判断した場合にラベルをつける。投稿者は決定に異議を申し立てることができる。この後にフェイスブックがファクトチェックの結果を無視できる仕掛けが用意されていた。
投稿者にフォロワーが多かったり、フェイスブック社内に担当マネージャーがついている広告主だった場合は、マネージャーがファクトチェッカーの指摘を確認する。そして優先度の高い問題あるいはPR上の問題があると判断した場合は、「エスカレーション」する=社内の管理システムに登録する。エスカレーションすると上司に通知がゆき、上司はほとんどの場合24時間以内に対応を決定する。
エスカレーションの対象となる投稿の選定と、その後の扱いはフェイスブック社内で決定される。ここが大きな問題である。ファクトチェック・パートナーが介在しないのである。BuzzFeedNewsによると、フェイスブックの社内の連絡用システムにひとりの社員が、右派ページからのファクトチェックに対する苦情がエスカレーションされ、同日中にその右派ページに有利な形で解決されたケースが複数あったと投稿した。
NBCにもフェイスブックが右派に規制を緩めているという記事が掲載された。極右のブライトバート、Diamond and Silk、PragerUなどのページが、フェイスブックのポリシーに反してもペナルティを課されないようにしていたのだ。しかもエスカレーションの約3分の2は保守派のページの問題に関するものだった。
BuzzFeed NewsとNBC Newsが入手した内部資料によると、フェイスブックは問題の指摘を受けたページへのペナルティの決定を控えたり、政治的な反発や広告収入が減るのを恐れてファクトチェック・パートナーの判断を無視していた。もちろんフェイスブックはそうした理由や証拠を公開していない。
フェイスブックは騙されやすい人を広告ターゲットにしていた
フェイスブックもグーグルもファクトチェック・パートナーからすると相当の予算を支払っているが、彼らの売上と利益からするとわずかなものにすぎない。2019年2月のThe Atlanticの推計では、年間数百万ドル(数億円)を支払っている。しかし、その時点でのフェイスブックの四半期の売上は169億ドル(1兆6,900億円)だったことを考えると、フェイスブックにとってのファクトチェックは、「なにもしないよりはやった方がいいが、それ以上の意味はない」というくらいのものだろうと記事では皮肉っている。
さらに問題なのは、フェイスブック自らがデマや陰謀論をビジネスに利用していたことだ。The Markupによればフェイスブックはエセ科学に興味を示している7,800万人以上を広告ターゲットとしてカテゴリー化していた。平たく言うとエセ科学に引っかかりやすい人に狙いすまして広告を出せる。陰謀論(New World Order (conspiracy theory))、ケムトレイル陰謀論(Chemtrail conspiracy theory)、ワクチン疑惑(Vaccine controversies)、ユダヤ人差別者(Jewhater)、ユダヤ人陰謀論(History of 'why jews ruin the world.)などもカテゴリーとして存在していた。
この記事では広告主自身(携帯電話の電磁波から頭を守る帽子)も知らない間に勝手にそのカテゴリーに広告が配信されていたという。フェイスブックが広告の効率を考えた結果だ。広告の「Why You're Seeing This Ad」タブを見ると、"LambsはFacebookがエセ科学に興味があると考える人々にリーチしようとしている "という理由が表示された。真面目に健康のための製品を販売しようとしている広告主(The Markupは広告主にも取材している)にとってもエセ科学よばわりされるのは心外だろう。もちろん、広告主が意図的にこうしたカテゴリーを選ぶこともできる。実際に、The Markupはエセ科学に興味があると考える人というカテゴリーに広告を出稿し、数分で承認されている。
これらのカテゴリーはThe Markupがフェイスブックに取材した後に消去されたが、どれだけの期間、どれほどの利用者にリーチしていたのかは不明だ。そしてまだ確認されていないこうしたデマやフェイクの格好のターゲットになるカテゴリーがどれだけあるかもわからない。
ここで根本的な疑念が浮かんで来る。
「本気でファクトチェックの効果を出したいなら、該当する内容に騙されやすい人に優先的にファクトチェックの結果を表示すればいいのではないか?」
もちろん、フェイスブックはそんなことしない。なぜなら、それは利用者が望んでいることはないからだ。むしろ、もっと騙されてくれた方がアクセスは増え、広告収入も増える。つまりフェイスブックにとってファクトチェックは優先すべきものはないのだ。騙しやすい、というと聞こえは悪いが、「関心や興味を持っているテーマ」に即した広告を表示しているのだ。
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