コラム

サウジ国王来日 主婦はほんとに爆買いにしか関心ないんですかね

2017年03月21日(火)17時30分

複雑な問題を簡単に解説しようとすると、絶対に重要な要素を落としてしまって、わかりやすいけど、まちがっているという事態になりかねないような気がします。ニュースを見るとき、すごくわかりやすいということがあれば、まずは眉唾だと考えたほうが安心ではないかなあ。

サウジアラビア、とくに今回の国王訪日の主目的について解説するために、いろいろ資料や分析結果を取り揃えて、1時間も話して、結局放送されるのは爆買いのところ数秒だけなんてことがあると、ほんとにガックリです。日本は、輸入する石油の3割以上をこの国に頼っているのに、そんな理解でいいんでしょうか。

その点、わりと長めに生でしゃべらせてくれるラジオはいい。今回取材を受けて一番驚いたのは、元AKB48の高橋みなみがTokyo FMでやっている「高橋みなみのこれから、何する?」という番組であった。

あらかじめ質問事項が送られてきていたんだが、もちろんそれらをみんな彼女が考えたかはわからない。しかし、途中で話が脱線したときでも、きちんと理解して、それに応じた対応をしていたのはさすが元総監督であった。と書いたけど、これはこれで逆にアイドル差別になってしまうか。まあ、他意はありません。

さて、肝心のサウジアラビア国王の訪日目的だが、これが日本単独訪問でないことを忘れるべきではない。マレーシアからはじまり、インドネシア、ブルネイときて、日本、中国、モルジブとつづき、さらに最後はヨルダンでアラブ・サミットに参加する。およそ1か月にわたる長期外遊だ。

日本だけの問題ではなく、サウジアラビアの大きな外交政策の一環として日本や他の訪問国を位置づけないと全体を見誤ることになる。と、小難しいことをいいはじめたところで、紙数が尽きてしまった。つづきはまたいつか。

と書いているそばから、国王のモルジブ訪問が延期になって、急遽リヤードに戻ってしまった。モルジブでインフルエンザが流行しているため、というのが公式の理由だが、実際にはサウジの対モルジブ投資を巡って反対運動が起きたのが本当の理由らしい。

【参考記事】コスプレは規制だらけ、サウジで初のコミコン開催
【参考記事】死と隣り合わせの「暴走ドリフト」がサウジで大流行

プロフィール

保坂修司

日本エネルギー経済研究所中東研究センター研究顧問。日本中東学会会長。
慶應義塾大学大学院修士課程修了(東洋史専攻)。在クウェート日本大使館・在サウジアラビア日本大使館専門調査員、中東調査会研究員、近畿大学教授、日本エネルギー経済研究所理事・中東研究センター長等を経て、現職。早稲田大学客員上級研究員を兼任。専門はペルシア湾岸地域近現代史、中東メディア論。主な著書に『乞食とイスラーム』(筑摩書房)、『新版 オサマ・ビンラディンの生涯と聖戦』(朝日新聞出版)、『イラク戦争と変貌する中東世界』『サイバー・イスラーム――越境する公共圏』(いずれも山川出版社)、『サウジアラビア――変わりゆく石油王国』『ジハード主義――アルカイダからイスラーム国へ』(いずれも岩波書店)など。

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