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中東各国のポケモンGO騒動あれこれ
で、今回もユダヤ陰謀論の震源地はエジプトのようだ。たとえば、エジプト軍のハムディー・バヒート元将軍は議会で「ポケモンGOは、エンターテインメントを隠れ蓑にしたスパイ機関の最新の道具である。やつらは実際には国民と国家をスパイしようとしているのだ」と証言している。また、ホサーム・アウィーシュ政府報道官は、ポケモンGOが国家安全保障上の深刻な脅威になるとの見かたを示している。2001年のときには、ポケモン=シオニストというのが、ポケモンがイスラーム的に許されないという議論の柱になっていたのだが、この見かたが多くのアラブ人に根強く残っているのがわかる。
とはいえ、ただでさえプライバシーの侵害や立ち入り禁止地域への侵入などが頻発しているのだから、GPSとかSNSとかカメラの性能とかを考えると、独裁体制の多い中東各国の治安機関の心配はわからないわけではない。実際、サウジアラビアを含む湾岸諸国のいくつかの通信関係機関はその点で注意喚起を行っている。たとえば、サウジアラビア南部のジャーザーンでは、ピカチュウを求めてはるばるやってきた3人の若者が空港内の立ち入り禁止区域に入って逮捕されるなどという事件も発生した。
【参考記事】クレムリンにもポケモン現る
当然、アラブ人の大好きな、ポケモンGO=フリーメーソンだといった話もあちこちで語られている。さらに、ポケモンが多くモスクに現れることにも注目が集まっている(例えば、
「ポケモンを狩るためにシーア派モスクに入らなければならない(泣)」というツイート)。
また、2001年のときのポケモン・ユーザーは子どもが中心だったのに対し、今回のポケモンGOではファンの年齢層がだいぶ上がっているように思う。したがって、自動車に乗ってポケモンを探しにいくといったケースもみられ(下記)、サウジアラビアでは交通局が、運転しながらポケモンGOをすると、罰金300サウジ・リヤール(約80米ドル)という警告を発している。
まだ新たなファトワー(宗教判断)は出ていない
一方、今回のポケモンGO騒動では意外と宗教関係者の出る幕が少なかった。例外的に早い対応としては、エジプトの宗教権威アズハル大学のアッバース・シューマーン副総長が挙げられる。彼は、ポケモンGOで遊ぶと、人びとは、ポケモンを捕まえるため、スマートフォンの画面に釘づけになって、酔っぱらいのようになると主張した(ただし、これは彼の個人的な意見で、正規のファトワー〔宗教判断〕ではない)。
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