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中東各国のポケモンGO騒動あれこれ
他方、サウジアラビアでは、前述のように、ポケモンGOのあつかいは、むしろ治安面や情報面での懸念が中心であった。しかし、7月20日になってようやく宗教界からの明確な判断が聞こえてきた。サウジアラビア最高宗教権威である最高ウラマー会議のメンバー、アブダッラー・マニーァが同日付のオカーズ紙に対し「最高ウラマー会議がポケモンGOで遊ぶことは許されないと決定した」と述べたのである。彼によれば、「(ポケモンGOは)国家安全保障にとって脅威である。それは、秘密の場所を暴露することを目的としており、そのことは祖国に対する裏切りとみなされる」のだという。
オカーズの記事ではマニーァ師の発言につづいて、2001年のファトワーに関する説明が出ており、最高ウラマー会議のウェブサイトでも、この古いファトワーの原文フルテキストが投稿された。これを受け、アラビア語、英語、日本語を問わず、最高ウラマー会議がポケモンGOについて新しいファトワーを出したと報じたところもあったが、それは明らかに間違いである。同会議も新たなファトワーを出していないと否定している。
最高ウラマー会議はツイッターでゲームの新版については新たなファトワーが必要だと述べているが、オカーズの記事にある最高ウラマー会議の「決定」がそのファトワーなのか、はっきりしないのだ。そうしているうちに、サウジアラビアにおけるポケモンGOファンはどんどん増殖している。15年前の子どもというと、ちょうど今、20代か、30代。まさにノスタルジアを含むポケモンGO世代である。かつて奪われたおもちゃを、彼らはふたたび奪われてしまうのだろうか。それとも何らかの手段で取り戻すことができるのだろうか。SNSという新たな武器を擁する若者たちの次の一手を見守りたい。
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