EU、軍事支出拡大と防衛強化へ ロシア懸念で2030年までに対応

欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会は19日、2030年までに「強力かつ十分な」防衛体制を確保することを目指す防衛白書を発表した。写真は EUの外相に当たるカラス外交安全保障上級代表(左)とクビリウス防衛担当(2025年 ロイター/Yves Herman)
Andrew Gray Lili Bayer
[ブリュッセル 19日 ロイター] - 欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会は19日、2030年までに「強力かつ十分な」防衛体制を確保することを目指す防衛白書を発表した。ウクライナ侵攻を続けるロシアを巡る懸念が増大する中、米国の将来的な支援に疑念が出ていることを背景に、欧州は軍事支出を一段と拡大させ、欧州製の兵器の調達を増やす必要があると提言した。
EUの外相に当たるカラス外交安全保障上級代表はブリュッセルで行った記者会見で「国際秩序は1945年以降に見られなかった規模で変化しており、欧州の安全保障は重要な転換点を迎えている」と指摘。ウクライナに侵攻しているロシアは予算の40%を軍事支出に充てるなど完全な戦時経済体制にあるとし、ウクライナでの戦争終結に向けた和平交渉が進められる中でも、 欧州の防衛体制拡充は「長期的な侵略計画に対する長期投資」になるとの考えを示した。
白書は、防空・ミサイル防衛のほか、砲弾、ミサイル、ドローン(無人機)、軍事輸送、人工知能(AI )、サイバー戦、インフラ保護などの分野で、EU加盟各国が迅速に資源を共同利用して不足分を埋めるよう提言。EUの財政インセンティブの恩恵を受けられる「欧州共通利益に適合する防衛プロジェクト」を通して実施することを提案した。
また、欧州委がEU全域の防衛装備品の市場の構築に取り組み、規則を簡素化、協調させる指針も示した。