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焦点:米経済、景気後退の瀬戸際か「移行期」か 影響は深刻

2025年03月13日(木)19時06分

3月13日、ラトニック米商務長官は、トランプ大統領の経済政策を実現するためなら、リセッション(景気後退)も「受け入れる価値がある」と述べた。ニューヨークのグランドセントラル駅で2月撮影(2025年 ロイター/Shannon Stapleton)

Howard Schneider

[ワシントン 13日 ロイター] - ラトニック米商務長官は、トランプ大統領の経済政策を実現するためなら、リセッション(景気後退)も「受け入れる価値がある」と述べた。一方、スコット・ベッセント財務長官は「デトックス(解毒)」の時期が来ると語り、トランプ氏自身は経済が「移行期」にあると述べている。

景気後退はどのような形であれ、大きな影響をもたらすことを歴史が示している。痛みは決して一様ではなく、景気後退の長さ、深刻さから回復の速度や規模に至るまで、結果は予測困難だ。

<GDPの縮小>

一般的に国内総生産(GDP)が2四半期連続で減少すると、景気後退とみなされる。

しかし、正式には全米経済研究所(NBER)の景気循環委員会がGDP以外に、失業率、政府給付金を除いた個人所得、個人消費、鉱工業生産などに基づいて景気後退の開始と終了を認定する。

これらの指標は長期間にわたって少しずつ悪化することもあれば、急激に悪化することもある。新型コロナ感染拡大時には、経済活動が急速に落ち込んだものの速やかに回復し、米国史上最も短い2カ月の景気後退で終わった。

一方で、2016年は経済が低迷したものの、景気後退と公式に宣言されることはなかった。

失業率、GDP、個人消費などのハードデータは、現時点で景気後退が起きていることを示していない。景気後退が話題に上がっているのは、企業と消費者の信頼感が悪化していることを示す最近の調査結果と、トランプ政権1期目の記憶によるものだ。当時は米国の関税の規模がはるかに小さく、減税も実施されたが、それでも世界経済の成長が鈍化した。

<景気後退の原因>  

1月時点では、米国の景気後退リスクは小さいと考えられていた。低失業率と賃金上昇を背景に消費は堅調を維持し、インフレ率は米連邦準備理事会(FRB)が目標とする2%に向けて低下傾向にあり、FRBは昨年9月以降、政策金利を1%ポイント引き下げていた。

FRB当局者はこうした経済状況が成長のための安定した土台ととらえていた。また、多くの経済学者は21─22年の高インフレからの「ソフトランディング(軟着陸)」に成功したと考えていた。

しかし、FRBの政策が景気後退を招くケースもある。1980年代初めには、当時のボルカーFRB議長は高インフレ抑制のために大幅な利上げを行い、経済は不況に陥った。  

最近の信頼感の不安定化、株価の下落、今後の経済活動の低下に対する懸念は、米国の主要貿易相手国に幅広く高水準の関税をかけるトランプ氏の政策に起因している。 

このようなショックは景気後退のもう一つの原因だ。新型コロナもその一例であり、2000年代初頭にはITバブルの崩壊と米同時多発攻撃という複合的なショックも発生した。

<誰が最も打撃を受けるか>

景気後退にはコストが伴う。企業利益は減少し、株価も下がる。投資家が消費を抑制すると、その影響はさらに拡大する。所得は減り、公的給付金の受給者が増えると政府の財政赤字が増加する。

新型コロナによるロックダウン(都市封鎖)から経済が力強く立ち直った理由の一つは、第1期トランプ政権とバイデン政権による政府支援だ。その結果として巨額の財政赤字が残されたため、経済が今後落ち込んだ場合に、政府の対応が制限されるとの見方もある。

しかし、景気後退の最も顕著な特徴は通常、失業率の上昇であり、失業者が最も深刻な打撃を受ける。  

米国の失業率の上昇は黒人やヒスパニック系に不釣り合いに大きな影響が及ぶ傾向があるが、景気後退の特徴は一様ではない。

例えば、金融危機から生じた07─09年の景気後退は、深刻かつ長期にわたり、最も解決が難しいものの一つだった。建設業、製造業、金融業といった男性が多数を占める業界で大量の雇用が失われたことから、「男性不況」とも呼ばれる。対照的に、新型コロナによる景気後退は当初、サービス部門で大規模な解雇が起こり、女性やヒスパニック系の人々に大きな打撃を与えた。

<景気後退のプラス面>

景気後退に明るい面があるとすれば、インフレ率が低下することだ。  

最近、スタグフレーションが話題となっている。カナダ、メキシコ、中国などの主要貿易相手国に対する関税措置により、米国内でインフレ率が上昇する一方で、経済成長が鈍化、あるいは縮小するのではないかという懸念が高まっている。

しかし景気後退が深刻化すれば、需要の低迷に伴いインフレ率は鈍化し、物価が下落することもあり得る。これはトランプ氏が2期目に実現すると約束したことだが、景気後退以外で物価が全般的に下落すれば異例なことだ。  

FRBは景気後退の影響を緩和するために利下げを行う公算が大きい。

金利が低下すれば、住宅購入希望者にとって有利な状況になる。住宅ローン金利の低下は住宅市場を活性化させ、景気回復にを後押しする可能性がある。

ロイター
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