日銀、米経済の不確実性を警戒 3月会合は現状維持の公算

3月13日、トランプ米政権の関税政策を巡る不確実性から、日銀では米国経済の下振れリスクに警戒感が高まっている。都内の日銀本店で1月撮影(2025年 ロイター/Issei Kato)
Takahiko Wada
[東京 13日 ロイター] - トランプ米政権の関税政策を巡る不確実性から、日銀では米国経済の下振れリスクに警戒感が高まっている。日本国内の物価は上振れ気味で推移しているものの、米国景気が急速に悪化すれば、日本経済への影響は免れない。1月の利上げの影響も含め、情勢を見極めるため、18―19日の金融政策決定会合では金融政策を現状維持とする公算が大きい。
トランプ政権による相次ぐ関税発動などを受け、米国経済を巡る不確実性が高まっている。日銀では、米政権の動向が米国の消費者心理を冷やし、実体経済を急減速させるリスクへの警戒感が高まっている。不確実性の大きさに加え、足元で内外の株価が大きく下落するなど、市場の振幅が大きくなることへの警戒感もある。
植田和男総裁は12日の参議院予算委員会で「こういうご時世なので、海外の経済・物価動向を巡る不確実性については非常に心配している」と述べた。
一方、日本国内の経済・物価は想定通りに推移しており、日銀内では、物価は上振れ気味で推移しているとの指摘もある。ただ、コメ価格や生鮮食品、食料加工品といった購入頻度が高い品目の価格上昇が企業や家計の期待インフレに与える影響については、4月に発表される日銀短観や生活意識アンケート調査を見たいとの声が強い。
14日には春闘の第1次集計が発表される。連合が公表した賃上げの要求水準(定期昇給分を含む)が加重平均で6.09%と昨年の5.85%を上回ったことで、市場では昨年を上回る賃上げ実現への期待が高まっているが、日銀では「しっかりとした賃上げ」を1月利上げの際に織り込んでおり、1次集計の結果だけで追加利上げに動く可能性は低いとみられている。
4月の一連の指標で期待インフレの上昇が確認されれば、4月30日―5月1日の決定会合での利上げの議論につながる可能性があるが、米国経済を巡る状況や市場動向もあり、日銀では次の利上げタイミングが見通しづらくなったとの声が出ている。
2月以降、10年金利は上昇を続け、3月10日には一時1.575%と2008年10月以来の高水準を付けた。植田総裁は12日、長期金利は「市場で自由に形成されることが基本だ」と改めて述べ、長期金利の上昇をけん制しなかった。日銀では金融環境の観点では短中期金利がより重要であり、10年金利の急ピッチな上昇による金融環境への悪影響は軽微だとの見方が出ている。