日産社長、内田氏から商品企画のエスピノーサ氏に 経営体制を刷新

3月11日、 日産自動車は内田誠社長兼最高経営責任者(CEO)が3月末で退任し、商品企画を統括してきたチーフプランニングオフィサーのイヴァン・エスピノーサ氏(46)を4月1日付で後任に充てる人事を発表した。都内で12月撮影(2025年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)
Maki Shiraki
[東京 11日 ロイター] - 日産自動車は11日、内田誠社長兼最高経営責任者(CEO)が3月末で退任し、商品企画を統括してきたチーフプランニングオフィサーのイヴァン・エスピノーサ氏(46)を4月1日付で後任に充てる人事を発表した。
業績が悪化する中、執行役も5人のうち4人を入れ替え、経営の立て直しを図る。
同日開催の取締役会で決議した。会見した内田社長は、昨秋に業績改善計画の取り組みを発表して以降、自身の経営責任を問う声が社外だけでなく従業員からも出てくるようになったと説明。社長交代について「従業員の一部から信任を得られない状況になったこと、取締役会からの要請があったことを踏まえ、新しい経営体制に移行し1日も早く再スタートを切ることが最善と判断した」とする一方、「こうした状況で次の社長にバトンを渡すことになったことは忸怩(じくじ)たる思い」とも述べた。
エスピノーサ氏は2003年にメキシコ日産に入社し、タイ日産のマーケティングダイレクターなどを務めた。会見では「日産にはまだ潜在力があり、多くの可能性を発揮できる」と述べ、安定性と成長を取り戻していきたいと意気込みを示した。
他社との連携についての考え方、特にホンダとの今後の協業関係に関する質問には「コメントできない」とした。人気の高いハイブリッド車の投入が現状できていない米国事業ではラインアップ(品ぞろえ)を強化すると説明。不振の中国事業は、初の中国市場向け電気自動車「N7」を投入することで対策をすでに推進しているという。
会見には、トップ人事案を策定する指名委員会の一員で、後任候補の選定プロセスにも関わった木村康取締役会議長も出席した。社長交代について「業界が厳しい状況にある中、当社の置かれている状況を踏まえると経営体制を刷新することは必要かつ適切」との考えを示し、エスピノーサ氏には社長としての「資質が十分あると判断した」と説明した。
足元の業績悪化は取締役会にも一定の責任があるとの意見に対しては「現在の日産の状況は非常に厳しく捉えており、責任の重大さも全員が認識している」と述べ、打開策として新しい体制を明確に構築することが最優先課題とした。
エスピノーサ氏の社長就任についてCLSA証券のアナリスト、クリストファー・リクター氏は、日産のブランドイメージがあまり確立されていない中で「製品担当の強力な人物を責任者に据えることは興味深い」と指摘。経費削減と黒字化が急務だが製品への投資も必要だとして、今回の人選は「短期的な問題の解決だけでなく、長期的な問題にも目を向けているというシグナルだ」との見方を示した。
一方で、投資家からは、業績悪化の要因として、米国で需要の高いハイブリッド車を投入できていなかったり、売れる車がなかったりなど、エスピノーサ氏の担当する商品企画に課題があり、同氏には経営の経験もないことから「人選には首をかしげる」との声も出ている。
日産はこの他、新たな経営体制として、赤石永一常務執行役員がチーフテクノロジーオフィサーに就任するなどの人事も発表。ジェレミー・パパン最高財務責任者(CFO)は職務を継続し、執行役に就任する。
生産購買担当の坂本秀行副社長、技術開発担当の中畔邦雄副社長、チーフブランド&カスタマーオフィサーの星野朝子副社長、チーフストラテジー&コーポレートアフェアーズオフィサーの渡部英朗氏も退任する。坂本氏は内田氏とともに、6月に開催予定の定時株主総会までは取締役を続ける。
日産ではカルロス・ゴーン元会長が18年に金融商品取引法違反の容疑で逮捕され、混乱の最中で内田氏が19年12月、中国事業のトップを経て社長に就任。その後、複数の事業計画を立ててきたが、抜本的な業績回復には至らなかった。
同社は北米や中国で販売が低迷し業績が急速に悪化、人員削減などで今年度は800億円の最終赤字を見込んでおり、内田社長の退任は避けられないとの見方が強まっていた。