追い詰められた民主党が苦しむ「バイデン降ろし」のジレンマ
バイデン頼みで負け戦を続けるより、若手候補を立てる方が得策か
米大統領選には選挙人団制度という特殊な仕組みがある。各州には2票ずつ選挙人の票が割り当てられ、さらに人口に応じて選挙人票が上積みされる。一般投票で有権者が選ぶのは選挙人で、選挙人が大統領を選ぶ。この制度では人口の少ない州と共和党が有利になる。共和党員には田舎に住む人が多いからだ。そのため通常、民主党は一般投票の得票率で共和党を4ポイント上回らなければ、大統領選の勝率で共和党と五分五分になれない。
今年の大統領選ではペンシルベニア、ウィスコンシン、ミシガン、バージニアの4つの激戦州をどちらが取るかで勝敗がほぼ決まるとみられている。バイデンは一般投票の得票率ではトランプを上回ると選挙アナリストはみていたが、たとえそうなってもペンシルベニア州を制し、さらにいくつかの激戦州を押さえなければ勝利をつかめない。暗殺未遂が起きたとき、トランプがペンシルベニア州の田舎で選挙運動をしていたのはただの偶然ではないのだ。
バイデンに代わる、バイデンより1世代若い有力な候補者としては、カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事、イリノイ州のJ・B・プリツカー知事、ミシガン州のグレッチェン・ウィトマー知事、ペンシルベニア州のジョシュ・シャピロ知事、そしてもちろんカマラ・ハリス副大統領らの名前が挙がっている。
代わりを選ぶなら、8月19〜22日にシカゴで開催される民主党全国大会でしかるべき手続きを踏むことになる。新たな候補者を立てれば有権者の関心がそちらに向き、トランプの独走を止められる可能性もある。
誰が指名されるにせよ、これから陣営を組織し、知名度を上げて資金を調達するなど数々の難題をクリアして、わずか10週間で有権者の信頼を勝ち取らなければならない。それでも、バイデン頼みで負け戦を続けるよりは、困難を承知で若い候補者を立てて全力で勝ちにいくほうが得策かもしれない。
バイデンによると、選挙は「コイン投げ」のようなもの。本当にそうなら勝率は50%だが、現状ではそれは楽観的すぎる見方のようだ。
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