「大炎上」アメリカ学生デモはアメリカ社会のイデオロギー戦争だ
正解なき論争、深まるガザの悲劇
3つ目は、アメリカ社会における保守派と進歩派のイデオロギー戦争である。共和党はこの機会を利用して、文化的エリートたちを「反ユダヤ主義」だと批判している。進歩派がキャンパスでヘイトスピーチを容認し、リベラルな思想が公共の安全をむしばんでいると言いたいのだ。
一方、左派の中にも、イスラエルの立場を人種差別主義・植民地主義と見なし、警察によるデモ制圧はアメリカ社会の反パレスチナ的・全体主義的傾向の表れだと批判する人たちがいる。このような見方が反ユダヤ主義の台頭を助長している。
キャンパスに立ち並ぶテントと声高に叫ばれるスローガン、デモを制圧する機動隊、そして右派と左派の人種差別的な主張を通じて、パレスチナ問題に関する議論はますます分かりにくくなっている。
それでも少なくとも言えるのは、大がかりなデモにより、パレスチナ人の苦境に改めて光が当たったこと、その半面でハマスの民族大虐殺的な主張が見落とされていること。そして、互いに決して歩み寄ることのないアメリカの党派対立の下、正解のないジレンマをめぐる論争により、ガザの悲劇がいっそう深まっていることだ。
2024年12月10日号(12月3日発売)は「サステナブルな未来へ 11の地域の挑戦」特集。地域から地球を救う11のチャレンジとJO1のメンバーが語る「環境のためにできること」
※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら
元CIA工作員が、かつての敵国ベトナムを訪問して新たに発見したこと 2024.11.27
リアリストが日本被団協のノーベル平和賞受賞に思うこと 2024.10.22
戦術で勝ち戦略で負ける......「作戦大成功」のイスラエルを待つ落とし穴 2024.10.08
カマラ・ハリスの大統領選討論会「圧勝」が、もはや無意味な理由 2024.09.25
共和党バンスvs民主党ウォルズは、あまりに対照的な副大統領候補対決 2024.09.03
全面戦争を避けたいイランに、汚職疑惑を抱えるネタニヤフが「悪夢の引き金」を引く 2024.08.20
大統領への道「勝負の100日間」ハリスの物語と夢のパワーがアメリカの命運を決める 2024.08.01