元CIA諜報員がウクライナ支援を解き明かす、バイデンの「不作為」と「プーチンの操り人形」トランプ
最前線のウクライナ兵は塹壕に籠もり、厳しい冬の気候に耐えて敵と対峙する(東部ドネツク地方で) JUSTIN YAUーSIPA USAーREUTERS
<さながら第1次大戦における塹壕戦の21世紀版。アメリカの軍事支援に世界の未来は懸かっているが、大統領選挙をにらみ、トランプが横やりを入れる>
ウクライナ戦争は3年目に入り、同国東部の戦線は実に延長1000キロに及ぶ。
農地も森林も砲弾でえぐられ、破壊された戦車や凍り付いた兵士の遺体があちこちに転がっている。
ロシア大統領のウラジーミル・プーチンはウクライナ国家の完全な解体を目指し、ウクライナ大統領のウォロディミル・ゼレンスキーは領土の完全な奪還を目指している。
どちらにとっても、妥協という名の選択肢はたぶんない。
そうであれば、無情で無益な殺し合いは今年も続くことになるのだろう。
せいぜい1機1000ドル程度の無人機がイナゴの大群のように飛び回り、1両で何百万ドルもする戦車を撃破している。
この2年間でウクライナ側はロシア軍の戦車3000両以上を破壊した。
この数はプーチンの言う「3日間」「特別軍事作戦」の開始時点でロシア軍が配備していた戦車の総数を上回る。
だから今のロシア軍は70年以上前の旧式戦車を引っ張り出して前線に向かわせている。
ロシア軍の死傷者は累計40万人に上るが、今もロシア兵は毎日、いわゆる「肉弾攻撃」でウクライナ側の陣地に突進している。
1日に最大で1000人のロシア兵が殺され、放置された遺体は誰もいない森で凍り付き、あるいは腐敗していく。
辺りにはロシア軍の装甲車両1万2000台の残骸も散らばる。
だがウクライナ側も、昨年夏の反転攻勢では成果を上げられなかった。
ロシア側の築いた幅100キロもの地雷原や塹壕を突破できなかった。
ロシアを守るためにウクライナを「非ナチ化」するのだと、プーチンは言い張ってきた。
思うようにいかない戦争を正当化するための、憎しみと偽りの愛国心で塗り固めた嘘にすぎなかったが、今は別な言説を持ち出している。
この戦争はロシアが生き延びるための、「真の敵」たるアメリカとの闘いなのだと。
間近に敵と遭遇するので両軍から「ゼロライン」と呼ばれる最前線から遠く離れた場所に、実はウクライナの運命を決める2つの「戦域」がある。
まずはロシアが展開する情報戦と、それに対抗するバイデン政権が激突する米国内の戦域。
もう1つはNATO諸国とロシアの工場で繰り広げられる武器製造合戦だ。
この2つの趨勢で、戦闘がいつまで続くかも、ウクライナが全ての領土を奪還できるかも、ロシアがどれだけの占領地を保持できるかも決まる。
あいにく結果は見通せない。
消耗戦と膠着状態は今年いっぱい続きそうだ。
しかし今、ロシアを決定的に利するような変化がアメリカの政治システムに生じている。
そう、死活的に重要な決戦の舞台はアメリカの首都ワシントン。
問われているのは、果たして議会がウクライナへの追加支援を認めるかどうか。
そしてジョー・バイデン米大統領がどんな手を打つかだ。
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