元CIA諜報員がウクライナ支援を解き明かす、バイデンの「不作為」と「プーチンの操り人形」トランプ
アメリカの支援が止まった
2022年2月24日にロシア軍の侵攻が始まって以来、アメリカはウクライナに750億ドル(約11兆円)以上の軍事的・財政的支援を行ってきた。
ウクライナ戦における真の敵はアメリカだというプーチンの言説は嘘八百だが、彼の信念でもあるだろう。
欧米の支援が止まればこの戦争には1週間で勝てると、吐き捨てるように言ったこともある。
しかしアメリカでは、予算を決める権限は大統領ではなく議会にある。
昨年の秋、バイデン政権は600億ドル(約9兆円)の追加軍事支援を議会に提案した。
これに(今年2月に承認された)EUの追加支援500億ユーロ(約8兆円)を加えれば、あと1年か2年粘って新たな攻勢に転じることも可能だった。
だがドナルド・トランプ前米大統領が横やりを入れた。
議会共和党を牛耳るトランプ派議員に、ウクライナ支援に反対するよう求めたのだ。
かつてヒラリー・クリントンが呼んだように、まさにトランプは「プーチンの操り人形」。これでアメリカ政府のウクライナ支援は止まった。
そもそもロシアは何年も前から、アメリカの世論や政治家に影響を与えるための情報戦を繰り広げてきた。
とりわけ2016年の大統領選には力を入れた。
筆者は10年も前から繰り返し指摘してきたが、ロシアの情報機関とつながりのある複数の人物がトランプとその取り巻きに接触していた証拠は掃いて捨てるほどある。
それは1979年に始まり、2016年の大統領選まで続いていた。
ロシアの情報機関に取り込まれたとは言わぬまでも、トランプが彼らに利用されていた形跡はある。
操り人形ではなかったとしても、ロシアのために「影響力を行使する代理人」ではあった。
そしてアメリカの国益を損なうような発言をして、プーチンを喜ばせていた。
現にトランプは2019年に、バイデンに不利な情報をウクライナから引き出そうとした疑いで弾劾されている。
その「情報」は、ウクライナに潜むロシアのスパイが提供したものだった。
ロシアの情報機関は長年にわたり、共和党の政治家やロビー団体、メディア関係者に何百万ドルもの資金を流してきた。
それは政界や国民の意見を親ロシア・反ウクライナに導き、同時にアメリカの制度や民主主義に不満を抱くように誘導する戦略的キャンペーンだった。
ロシアの資金を受け取っていた1人が、現下院議長のマイク・ジョンソンだ。
ロシアのもくろみはあらゆる面で成功している。
トランプはプーチンのウクライナ侵攻を「天才的」と評し、NATOの悪口を繰り返している。
ウクライナ支援に反対する共和党議員は多く、もはや議会はまともに機能していない。
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