コラム

もうEVに乗り換えるしかないのに、日本の「出遅れ感」と「痛恨のミス」が気になる...

2023年12月27日(水)12時40分

EVの航続距離は毎年10%のペースで延び続けている。リチウムイオン電池から新型の全固体電池への転換に伴って、さらに延び続け、数年後には航続距離800キロが当たり前になるだろう。

充電スタンドでは今や15〜30分でフル充電が可能だ。世界的に充電施設の整備が進んでおり、アメリカでは現在の約400万カ所から30年には3500万カ所に、900%近く増えると予想されている。

ただし24年、さらにそれ以降も2つの強力な利益集団がEV革命に抵抗し、EVの普及に待ったをかける恐れがある。石油天然ガス業界とその支援を受けている政治家だ。

アメリカの場合、後者は共和党とドナルド・トランプ前大統領である。トランプは大統領に再選されたら、「就任初日に」、石油天然ガスを「掘って、掘って、掘りまくる」ためのゴーサインを出すと宣言している。

懸念すべきは日本の自動車業界がEV開発で世界に後れを取りかねないこと。トヨタが水素を燃料とする燃料電池車(FCV)に注力する方針を打ち出したのは痛恨の戦略ミスだろう。

FCVは今のところEVと競争できず、マスマーケットへの進出にはまだ何年もかかりそうだ。世界のEV市場が爆発的に拡大するなか、日本の自動車大手はEVの開発投資で大きく出遅れた感が否めない。

私たち夫婦が19年にEVを購入したときには、アメリカでもEVに乗るドライバーは少数派だった。だが今や、世界中で一気に普及が進む転換点を超えつつある。温暖化が制御不能になる転換点よりわずかに早かったのはもっけの幸いだ。

プロフィール

グレン・カール

GLENN CARLE 元CIA諜報員。約20年間にわたり世界各地での諜報・工作活動に関わり、後に米国家情報会議情報分析次官として米政府のテロ分析責任者を務めた

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