なぜ今また「武漢ウイルス研究所説」がアメリカで再燃しているのか?
アメリカの情報機関が「確信度の低い」評価という言葉を用いる場合は、確かな情報はなく、わずかにその判断に傾いていることを意味するにすぎない。ウイルスの発生源について誰も確証がないことに変わりはないのだ。
ただ事実や専門家の確信度がどうであろうと、政敵への攻撃材料に飛び付かずにいられないのが政治家の習性。
もともと、トランプ前政権の元首席戦略官スティーブ・バノンらが取り上げるまで研究所流出説は根拠薄弱でとっぴな主張にすぎなかったが、トランプ派は国内の政敵と中国を批判する材料として利用した。
そして今回の報道を受け、共和党支持者たちは、研究所流出説を陰謀論扱いしていた人たちの誤りを裏付ける材料がさらに増えたと言い始めている。
しかし、情報機関が断定的な分析評価結果を示すことは極めて少ない。多くの場合、情報は何通りもの解釈が可能だからだ。その上、全体主義的で強権主義的な中国政府は、新型コロナウイルスの発生源に関して重要なデータを破棄し、調査に十分な協力をしてこなかった。
アメリカの情報機関コミュニティーが全般的に、ウイルスが自然界の動物から人間に感染したという説に傾いていることは現在も変わっていない。
共和党はうさんくさいストーリーに飛び付き、それを悪用したのである。
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