ビジネスか、国際秩序か──「台湾海峡危機」が日本に突き付けたものとは?
航空自衛隊は将来の台湾危機で出動するのか(沖縄の那覇基地) KEIZO MORI/AFLO
<2049年までに台湾併合を成し遂げると公言する習近平だが、2030年までに前倒しの予測も。日本は「自由で開かれたインド太平洋」、それとも「中国が覇権を握るインド太平洋」で生きるかを迫られることに>
ナンシー・ペロシ米下院議長の台湾訪問をきっかけに、アジアの全ての国が一つの大きな選択を突き付けられた。その国はどのような未来を望むのか。次第に多極化する「自由で開かれたインド太平洋」で生きたいのか。それともアメリカが西半球に押し返されて、中国が覇権を握るインド太平洋で生きたいのか。
ペロシの訪台でアメリカと中国の間の緊張が高まり、「第4次台湾海峡危機」と呼ぶべき状況が生まれている。26年前の第3次台湾海峡危機を振り返ると、この四半世紀の間に台湾問題の危険性がいかに増大しているかがよく分かる。
1995~96年、中国が台湾周辺の海域にミサイルを発射した。アメリカが台湾の李登輝総統(当時)の入国を認めたことと、台湾初の直接総統選挙に抗議し、台湾独立への動きを牽制することが狙いだった。
しかし、当時のアメリカは世界で唯一の超大国。国防予算は中国の約20倍に達していた。アメリカが台湾海峡に2隻の空母を派遣すると、中国はそれをただ見ているほかなかった。
一方、今日の中国は政治的にも経済的にも巨大な存在になっている。軍事力でもアメリカに肩を並べようかという勢いだ。世界最大の海軍を擁し、アメリカの空母を破壊するためのミサイルも配備している。
習近平(シー・チンピン)国家主席は、アメリカが衰退しつつあると見なしていて、台湾を併合することにより国の誇りを高めたいと考えている。2049年までに台湾併合を成し遂げると、習は公言している。2030年までに中国が台湾に侵攻すると懸念する論者もいる。
中国政府はペロシの訪台が中台分離を狙うアメリカの政策転換の一部で、「平和と安定」そして台湾への主権を脅かすと受け止め、今回も台湾周辺の海域にミサイルを撃ち込み、大規模な軍事演習を実施した。
アメリカと中国という2つの大国が台湾を舞台に激突することになるのではないか──アジアの国々は懸念を募らせている。しかし、それらの国は、いま自国が大きな選択を迫られていることも認識すべきだ。
この10年以上、中国の対外姿勢はますます強硬になり、チベットから南シナ海までさまざまな地域で強引に自国の意思を押し付けてきた。中国政府を批判する外国の研究者などへの圧力も強めている。
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