コラム

元CIA工作員が分析する2022年...中国は大人しくなるが、アメリカは揺れる

2022年01月05日(水)17時21分
世界の国々(イメージ)

CYBRAIN/ISTOCK

<世界経済、外交、アメリカ、地球温暖化という4つのテーマの行方について、今年はどういった動きがあるかを予測する>

賢い人は自分が何も知らないことを知っている。195カ国で78億人超が暮らし、毎年約350万件の特許が出願されるこの世界は、国際情勢の変動要因があまりに大きい。とはいえ、工作員たるもの、地平線のかなたに何があるかを政策立案者に報告しなければならない。傲慢さは承知の上で、2022年の主要な情勢を予測しよう。

■世界経済

世界経済にとってよい1年になる。IMFの予測によると、22年の世界のGDP成長率は4.9%と堅調だ。

地球温暖化の影響で「100年に1度」レベルの暴風雨や山火事、ハリケーン、洪水などが増えているが、皮肉なことに、人災や自然災害は経済を刺激する。被害の復興や先送りになった成長を埋め合わせるために、強い需要が生み出されるからだ。

14世紀にペストが大流行してヨーロッパの人口の3分の1が死亡した後、(生き残った人々は)賃金と生活水準が上昇した。この2年、新型コロナウイルスのパンデミックは世界経済のあらゆる部門をゆがめ、低迷させている。しかし、特にアメリカとEUは、歴史的に見ても巨額の現金(アメリカはGDPの10%以上、EUは7.5%以上)を自国の経済に投入している。

■外交

大国が国際社会を支配し、ネオファシズム的なポピュリズムが民主主義国家に圧力をかけ続ける。世界全体で、グローバリゼーションと移民がもたらす影響が民主主義を圧迫するだろう。

米中は数十年に及ぶであろう競争の時代に突入したが、中国は、この1年は国際情勢のある程度の安定を模索する。2月の北京冬季五輪や、習近平(シー・チンピン)国家主席の事実上の戴冠式となる10月の第20回中国共産党大会で、自らの輝かしいイメージを世界に誇示したいからだ。ロシアがウクライナに侵攻する可能性は低い。だが、軍事的な脅しや圧力をかけ続け、ウクライナ東部のより広い地域にその影響力と主権の主張を大っぴらに拡大するだろう。

新型コロナに有効なワクチンがあっても、ウイルスは右派と左派、富める者と貧しい者の分断を広げるはずだ。

■アメリカ

アメリカの政治的麻痺は悪化するかもしれない。秋の中間選挙で、民主党は連邦議会の過半数に届かない可能性が高い。その場合、バイデン米大統領の野心的な社会・経済投資の政策は大統領令に頼らざるを得なくなる。

一方で、アメリカは関係国との同盟関係を復活させる。インフラ投資がその経済と国際競争力を活性化させるだろう。ただし、社会の分断の深化と共和党のファシズム化で、歴史的な構造危機と大規模な社会的暴力が迫っている。

プロフィール

グレン・カール

GLENN CARLE 元CIA諜報員。約20年間にわたり世界各地での諜報・工作活動に関わり、後に米国家情報会議情報分析次官として米政府のテロ分析責任者を務めた

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

アップル、今年の世界開発者会議は6月9―13日に開

ビジネス

米国、輸出制限リストに70団体を追加 中国・イラン

ビジネス

米財政状況は悪化の一途で債務余裕度低下、ムーディー

ワールド

ザポロジエ原発「ロシアの施設」、他国への管理移転不
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 3
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取締役会はマスクCEOを辞めさせろ」
  • 4
    「トランプが変えた世界」を30年前に描いていた...あ…
  • 5
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 6
    トランプ批判で入国拒否も?...米空港で広がる「スマ…
  • 7
    「悪循環」中国の飲食店に大倒産時代が到来...デフレ…
  • 8
    【クイズ】アメリカで「ネズミが大量発生している」…
  • 9
    老化を遅らせる食事法...細胞を大掃除する「断続的フ…
  • 10
    【クイズ】トランプ大統領の出身大学は?
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 5
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
  • 6
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 7
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「レアアース」の生産量が多…
  • 10
    古代ギリシャの沈没船から発見された世界最古の「コ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story