コロナ禍の東京五輪に、私たちが夢中になる理由
■ステータス
人生とは、自分の地位をめぐる終わりなき戦いだ。子供は遊び場、スポーツ、学校のクラス、仲間内でヒエラルキーを作る。大人の社会も、階層によって成り立っている。
男性はあらゆる方法で栄誉や誇れる功績を手に入れようとする。ある研究によると、男性のテストステロンの値はチームや味方が勝つと上昇し、負けると下がる。これはゲームの参加者でもファンでも同じだ。
私たちのほとんどは「アルファ雄(群れのリーダー)」にはなれない。しかし、人間は本能的に自分の地位を上げようとする。そのため、私たちは意識的または無意識的にスポーツ界のヒーローと一体化し、彼らの地位や勝利や失敗を疑似体験するのだ。
■性的魅力
私たちは人間を合理的な存在と見なし、社会生活と性生活の間には明確な違いがあると考えている。だが、この認識も誤りだ。
私たちがサッカーやテニスのスター選手と自分を一体化させるのは、彼らが注目の的であり、内集団のアルファ雄(つまり群れの中で最も魅力的なリーダーの雄)であるからだ。
少なくとも私たちの潜在意識下では、彼らは繁殖パートナーを選べる雄だ。あらゆる人間の行動の背後には、生き残りたい、子孫を残したいという衝動がある。
五輪を含むスポーツの観戦は、本能的な行動に近い。だから危険なウイルスでも、幸福、帰属意識、地位、性的魅力を求める私たちを止められないのだろう。

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