トランプ後の共和党とQアノン、アメリカのファシズム的未来
トランプは、世界を牛耳る官僚や民主党員、ユダヤ人、CIA職員、国際金融資本などによる陰謀から一般庶民を守ろうとしていて、これらの勢力はトランプを抹殺しようとしている──と、Qアノンは信じている(ちなみに、筆者は元CIA工作員・元米連邦政府職員で、民主党を支持していて、子供時代にユダヤ人の町で育ち、金融機関で働いた経験もあるが、残念ながら世界を牛耳ってはいない)。
暴動は得てしてそういうものだが、議事堂で起きた出来事は、トランプ支持派にダメージを与える結果を招いた。
上院で誰よりも卑屈なまでにトランプ支持を打ち出していたホーリーとテッド・クルーズの両上院議員はこの一件で厳しい批判を浴び、2人の政治的立場は(少なくとも現時点では)今回の事件が起きる前よりもかなり苦しくなっている。
トランプ自身も、ついに大統領選での敗北を認めざるを得なくなった。
トランプ支持派の議事堂乱入は、アメリカにとって19世紀半ばの南北戦争以降で最悪の危機と言っていい。しかし、アメリカの民主主義に対してそれ以上に大きな危険の種は、昨年11月の大統領選でトランプに投票した膨大な数の有権者の思考の中に潜んでいる。
それにより、アメリカは、トランプが去った後も長期にわたり、社会的・政治的な分断と衝突に苦しめられるだろう。
共和党はこの60~80年ほどの間、右傾化し続けてきた。これは、圧倒的に白人中心だったアメリカ社会が多民族社会へ移行し、あらゆるグループに平等な権利を認めるようになり始めたことへの反発が生み出した結果だった。
共和党は白人の既得権、大企業の利益、一部の人への富の集中を擁護する政党に変貌している。今日の共和党的発想によれば、連邦政府の政策はほぼ全て、「昔ながらの生き方」と「自由」を否定し、白人に犠牲を強いてマイノリティーを「不公正に」(とこの勢力は考えている)優遇するものに見えている。
トランプ後も変わらないもの
壊された議事堂の窓ガラスはいずれ修復され、建物に充満した催涙ガスの臭いはすぐに消えるだろう。そして、トランプはやがて嘲笑の対象になるだろう。トランプ後の共和党を主導する政治家たちが公然と暴動をけしかけることも考えにくい。
しかし、共和党を支持する社会的・人種的グループがアメリカ社会の支配的地位から滑り落ち続けることに変わりはない。共和党のリーダーたちはこれからも、役割を果たそうとする政府の足を引っ張り、社会変革と経済的再分配を妨害し続けるだろう。
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