トランプが去っても「トランプ政治」はアメリカを破壊し続ける
ティーパーティーやQアノンの活動が政府の機能麻痺を生むことは、ほぼ避けられない。ティーパーティーはこれまでも連邦政府をたびたび一時閉鎖に追い込み、新しい法律や政府の行動をことごとく阻止しようとしてきた。そうした先には確実に、社会の混乱が待っている。
国民に政府を憎ませた共和党
私の大学時代の同級生で共和党に絶大な影響力を持つ全米税制改革協議会会長のグローバー・ノークイストはこの40年間、連邦政府の規模を半分に減らすことを共和党の主要な長期目標の1つと位置付けてきた。社会保障・福祉制度をほぼ全廃し、連邦政府の役割を国防と国境警備に限定しようというのだ。
共和党の政治家が選挙でノークイストのグループの支援を受けるためには、「誓約書」に署名しなくてはならない。決して増税に賛成しないことと、連邦政府の規模の半減を目指すことを約束させられるのだ。
当然、民主党や多くの国民はこうした動きに反対する。その結果、イデオロギー対立が深刻化し、互いに妥協しようとしなくなる。それが政治の麻痺を生み出し、社会を大混乱に陥れてきた。いま大統領選をめぐって起きていることはその典型だ。
それでも、ノークイストと共和党は、多くのアメリカ人に「政府」への脊髄反射的な敵意を持たせることにかなりの成功を収めてきた。トランプを支持し、「民兵組織」の一員として、「法と秩序」を守るためと称し街頭に繰り出す膨大な数のアメリカ人は、政府を文字どおり敵と見なしている。
1995年には、民兵組織とつながりのある男がオクラホマ州の連邦政府ビルを爆破し、168人の命を奪う事件が起きた。FBIとCIAは長年にわたり、アメリカ国内の安全を脅かす最大の脅威は(イスラム過激派のテロ以上に)民兵組織だと警鐘を鳴らしてきた。しかし、共和党のリーダーたちは、そうした警告を年次報告書に記さないようにと、FBIとCIAに指示していた(私は報告書の執筆を数回担当したことがあるので、それをよく知っている)。
トランプに至っては、2017年にバージニア州シャーロッツビルの極右集会で人種差別的・ユダヤ人差別的なスローガンを掲げたグループや、この10月にミシガン州知事の誘拐を企てたグループを擁護するような発言を繰り返している。
いまアメリカ人の25~40%は、民主主義と相いれない考え方を持っている。政治的取引と妥協を嫌悪する彼らは、ワシントンの腐敗した政治家と官僚のせいで正しい政策が阻まれていると考えているのだ。そこで、「政治家」ではない「アウトサイダー」に期待を寄せる。支持者はトランプをそのような存在と位置付け、トランプ自身も4年前、アメリカの課題を解決できるのは自分しかいないと胸を張った。
問題は、それがファシズムの温床になりかねないことだ。腐敗したエリートと官僚機構から人々を守るためには強力なリーダーが必要だという発想は、民主主義の土台を揺るがし、政府を機能不全に陥れて、社会不安と暴力を生む危険がある。
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