トランプが去っても「トランプ政治」はアメリカを破壊し続ける
ホワイトハウスの記者会見場から退場するトランプ(11月5日) CARLOS BARRIA-REUTERS
<全世界が驚いた共和党のしぶとさ──民主主義の土台を蝕み始めたアメリカ文化に潜む「悪魔」とバイデンは戦うことになる。本誌「米大統領選2020 アメリカの一番長い日」特集より>
アメリカでは誰もが固唾をのんで大統領選の開票状況を見守り、ドナルド・トランプ大統領の──そして連邦議会選での共和党の──思わぬ強さに驚きを感じずにいられなかった。
最終的にどのような決着を見るにせよ、この選挙のダメージは後々までアメリカをさいなむだろう。だが、問題は今回の選挙で生まれたわけではない。アメリカの文化に潜む「悪魔」が社会と政治システムをむしばみつつあるのだ。この国の文化と政治でゆっくり進んできた変化にテクノロジーの影響が相まって、社会と政治が半ば機能不全に陥っている。
トランプが破壊を強力に推し進めてきたことは確かだが、アメリカの社会と政治が機能不全に陥った直接的な要因は、少なくとも約60年前、見方によっては240年前の建国時から存在していた。たとえトランプが退場しても、政治の麻痺と社会の退廃が解消されるわけではない。
共和党が現在のような政治姿勢を取るようになったのは1964年のこと。極右が党内の主導権を握り、この年の大統領選でバリー・ゴールドウォーターを大統領候補に選んだ(本選挙では現職のリンドン・ジョンソンに敗北)。その指名受諾演説でゴールドウォーターが述べた言葉はあまりに有名だ。「自由を守るための急進主義は、全く悪ではない。正義を追求するための穏健主義は、全く美徳ではない」
これ以降、共和党はひたすら右へ右へと歩み続けてきた。今では、妥協することを民主主義の重要な原則と考えるのではなく、原理原則への裏切りと見なす傾向が強まっている。
その後60年近くの間に、共和党は連邦政府への敵意を強めていった。ロナルド・レーガンは1981年の大統領就任演説で、「政府こそが問題だ」と述べた。「政府」と妥協への敵意は、これ以降も強まる一方だった。
トランプも4年前、政治のアウトサイダーとして大統領選の勝者になった。政界の腐敗と癒着を大掃除し、利己的な政治家と官僚を一掃するという期待を担っていたのだ。
私は数年前、カリフォルニアで結婚披露宴に出席したとき、トランプ支持者の考え方を痛感した。このパーティーで、隣席の男性から職業を尋ねられた。そういうとき、私はたいてい「CIAで働いています」とは答えない。その日も「ワシントンで政府の仕事をしています」と答えた。すると、男性は私をまじまじと見て「あなたは敵だ」と言った。
「いや、違いますよ。私は公僕です。国民が望む仕事をしているのです」と反論したが、男性の態度は変わらなかった。「いや、あなたたちは私たちの自由を奪おうとしている」
このような発想は共和党と、草の根保守連合ティーパーティー、そして「QAnon(Qアノン)」と呼ばれるトランプ支持の陰謀論者たちの間に広まっている。
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