日本人の安全保障意識を変えた首相......安倍が残した真のレガシー
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自衛隊記念日観閲式に出席した安倍(2018年10月14日、陸上自衛隊朝霞訓練場) KIM KYUNG HOON-REUTERS
<安全保障上の能力を強化することに腐心した安倍首相。スピード感に欠けると批判する論者もいるが、その「遅さ」によって日本の政治文化や国民の思考を変えてきた>
安倍晋三首相の辞任は、第2次大戦後の国際秩序、すなわちルールに基づく国際システムを守りたいと考える世界中の人々にとって大きな損失と言わざるを得ない。
第2次大戦後、最初は当時の共産主義超大国であるソ連が、そして近年は中国がこの国際秩序に挑んできた。そうした挑戦をはねのける上で大きな役割を果たしてきたのは、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、日本の5カ国。言ってみれば「ビッグ・ファイブ」だ。
しかし、ここにきて状況が変わり始めている。いまアメリカを率いるリーダーは、気まぐれで孤立主義的なドナルド・トランプ大統領だ。イギリスのボリス・ジョンソン首相も、無定見で利己主義的な行動に終始している。ドイツのアンゲラ・メルケル首相は一貫して国際協調主義的な行動を取ってきたが、退任の時期が近づいている。
安倍の辞任により、第2次大戦後の国際秩序の守り手として手腕を期待できる存在は、フランスのエマニュエル・マクロン大統領だけになってしまった。ロシアに皇帝のごとく君臨するウラジーミル・プーチン大統領や、中国の皇帝と言っても過言でない習近平(シー・チンピン)国家主席の領土拡大主義的行動を押しとどめることは、マクロン一人では不可能だ。
安倍は、第2次大戦後の日本で最も成果を上げた首相と言えるだろう。首相在任期間を通じて、日本の国益を追求するために自国の国際的役割を拡大させ、ルール重視の国際秩序を守ろうとしてきた。安倍が目指したのは、アメリカが国際的役割を縮小させることで生じる空白を埋め、不安定化するアジアの安全保障環境に対応することだった。
日本に完全な安全保障上の能力を持たせようとする安倍の路線は、次の首相も引き継ぐだろう。しかし、自国にできることの範囲を少しずつ押し広げていくための知恵に関しては、安倍に肩を並べる者はおそらくいない。
「鉄の拳」と「いずも」
安倍が日本の安全保障の在り方にもたらした変化を最もくっきりと映し出していたのは、今年2月にカリフォルニア州サンディエゴ沖に浮かぶサンクレメンテ島で見られた光景かもしれない。
陸上自衛隊の離島防衛専門部隊「水陸機動団」の隊員300人が米海兵隊と合同で、この島への上陸訓練を行ったのだ。「アイアン・フィスト(鉄の拳)2020」と名付られた演習である。
この水陸機動団は、安倍政権下で2018年に創設された(3000人規模)。これにより、日本は第2次大戦後初めて、離島に兵力を送り込んで上陸作戦を行う能力を持ったことになる。水陸機動団の創設と「アイアン・フィスト2020」の実施は、日本の領海内と南シナ海を視野に入れた離島防衛能力強化の一環と位置付けられる。
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