トランプ政権の腐敗を暴くボルトン回顧録の破壊力、しかしその動機は「肥大した自尊心」
■過信
この本の狙いは、トランプ政権の惨状からボルトン自身を切り離すことにある。もちろん、ボルトンには愚か者の嘘つきに仕えているという自覚が常にあった。
ボルトンは元上司をアメリカ史上最悪で最も危険な大統領だと散々にこき下ろす。個人的利益のために外国と手を結ぶ人物であり、側近たちも軽蔑している、と。
しかし、ボルトンはトランプの弾劾裁判で証言しなかった。代わりに200万ドルともいわれる出版契約を結び、トランプの「重大な犯罪と軽犯罪」を語ることにした。
本の中でボルトンは、裁判の進め方について民主党を非難している。しかし、政敵を攻撃しても元上司を罵っても、ボルトン自身の責任を免れることはできない。
在任中のボルトンは傲慢な態度で現実から目を背け、有害な人物であることを知りながら大統領を支え、退任後も弾劾裁判での証言を回避した。この本は傲慢な金儲けの道具にほかならない。
だが同時にトランプの腐敗と中身のなさを暴き出したことも事実だ。トランプの岩盤支持層も一定の影響を受けるだろう。
<本誌2020年7月7日号掲載>
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2020年7月7日号(6月30日発売)は「Black Lives Matter」特集。今回の黒人差別反対運動はいつもと違う――。黒人社会の慟哭、抗議拡大の理由、警察vs黒人の暗黒史。「人権軽視大国」アメリカがついに変わるのか。特別寄稿ウェスリー・ラウリー(ピュリツァー賞受賞ジャーナリスト)
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