「令和」の時代に日本が直面する最大の問題とは何か
新しい元号に込めた意味を説明する安倍首相(4月1日の記者会見で) TOMOHIRO OHSUMI/GETTY IMAGES
<国際秩序の激変や急速な人口減少などの試練に対処し、「美しい調和」の時代を築くことができるのか>
1人の外国人の目から見ると、新しい元号に「令和」を選んだのは、安倍晋三首相らしい選択に思える。新しい時代に日本が取り組むべき課題をよく表した元号と言えそうだ。
令和という言葉には、よき伝統を大切にしつつ、因習と決別して国際秩序の激変に向き合い、調和の取れた明るい未来を切り開きたいという思いが感じ取れる。安倍は首相就任以来、変化に柔軟で創造性の豊かな社会を築こうと努めてきた。新しい時代に日本が直面する試練に対処するためには、ひたすら伝統にしがみつくだけでも、同盟国に頼るだけでも十分でないと理解しているからだ。
未来のことは誰にも分からないが、日本にとって令和がどのくらい明るい時代になるかを探る手掛かりはある。
国際戦略専門家は、国の国力を評価する際、「SPERM」という英語の頭文字で表現される5つの要素を重視する。社会(Society)、政治(Politics)、経済(Economics)、宗教(Religion)、軍事(Military)だ。「sperm」という英単語には精子という意味があるので、厳格なイスラム圏の国で講演するときにこの言葉を使うと通訳してもらえないことがあるのだが......。
以下では、この5つの要素に関して日本の未来を見ていこう。
社会
国力の指標の1つは、社会の一体性だ。社会で守るべき規範や国として追求する使命について、どのくらい社会で合意が形成されているかが大きな意味を持つ。
日本にはこの面で強みがある。分断や亀裂が深刻な国とは異なり、日本は社会の同質性が比較的高く、文化的・国家的な自己イメージも広く共有されている。そのため、国全体で追求する目標を設定し、それに向かって前進しやすい。社会の一体性を重んじるあまり多様性を嫌う落とし穴にはまることは避けるべきだが、国際秩序がますます混沌とする令和の時代に、日本社会の一体性は大きな強みになる。
政治
政治システムの安定性と効率性も国力の重要な要素だ。私が思うに、日本の政治の特徴は、コンセンサス重視のエリート支配型民主主義にある。
日本人の中には、ごく短期間を除いて自民党が長期間政権を握り続けていることに不満な人もいるかもしれない。しかし、社会的・政治的なコンセンサスが広く共有されていて、優秀な官僚と職業政治家、行政機関を擁している日本は、国の規模以上に強力な国になれる可能性がある。
ただし、その潜在能力を生かすには、社会的調和の代償として停滞を受け入れるのではなく、積極的に行動する意思を持たなくてはならない。
経済
言うまでもなく、日本の経済は、規模、効率性、富、テクノロジーのイノベーションに関して世界トップクラスだ。資本、労働、起業の面でも強みがある。国土の広さに関しては強気になれないだろうが、今日の経済では、国家としての柔軟性、労働力の流動性、テクノロジーのイノベーションのほうが重要になっている。
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