コラム

「令和」の時代に日本が直面する最大の問題とは何か

2019年04月18日(木)13時30分

労働力人口の減少と高齢化も不安材料の1つだ。しかし、日本は長年の方針を転換して、外国人技能労働者の受け入れを大幅に拡大することにした。新しい制度の下、向こう5年間で最大34万5000人の外国人労働者が日本にやって来る。これにより、人手不足の緩和が期待されている。経済成長にも好影響が及ぶだろう。

国際競争の激化や人口の減少により、これからも低成長の時代は続きそうだ。それでも、日本は世界の経済大国であり続けられる可能性が高い。

宗教

社会の宗教的一体感の強さが国力の源になるとよく言われる。そのようなケースがあるのは事実だが、宗教は時として社会の発展を阻害する。冒頭で触れた「SPERM」のエピソードのような宗教的タブーは、自由な思考を閉ざし、変化の可能性を狭める。その結果、社会が発展し国力を高める妨げになりかねない。

日本人が信奉している「宗教」は、自国文化への強い誇りだろう。その信仰は、国民が強い使命感を抱いて前進することを後押しする可能性もあるし、逆に人々に真実を見えなくさせ、破滅への道を歩ませる可能性もある。

戦時中の日本人の日記や、9.11テロ直後のアメリカ社会の状況から判断すると、宗教的な思い込みが人間の視野を狭めることは否定できない。しかし、これらの経験は、宗教的な信念が国民を動かす強い力を持っていることも浮き彫りにしている。この点で、日本人の「宗教」が日本の国力を強める一要素になり得ることは間違いない。

軍事

歴史上、国家は軍事力により国力を誇示してきた。戦後の日本は限定的な事力しか保持してこなかったが、安倍の意向もあって、最近はそれが変わり始めている。また、日本は長年、防衛費をGNP(国民総生産)の1%程度までにとどめているものの、日本の経済規模の大きさを考えれば1%でも相当な金額だ。

それでも、国防予算の規模は中国の足元にも及ばないし、中国は膨大な人口、広大な国土、それに豊富な資源という軍事的な強みを持っている。それに、戦後75年近くがたっても、日本人はいまだに平和主義的志向が強い。

つまり、日本は一般的なイメージよりは強大な軍事力を擁しているが、中国の圧倒的な軍事力との差はますます開いていく。そこで、日本にとっては同盟国との関係を強化することが不可欠だ。安倍もそれを目指しているように見える。

プロフィール

グレン・カール

GLENN CARLE 元CIA諜報員。約20年間にわたり世界各地での諜報・工作活動に関わり、後に米国家情報会議情報分析次官として米政府のテロ分析責任者を務めた

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アフリカなどの途上国、中期デフォルトリスクが上昇=

ビジネス

商船三井の今期、純利益を500億円上方修正 期末配

ビジネス

大和証Gの10-12月期、純利益は63.9%増の4

ビジネス

午前の日経平均は続伸、米株高の流れを好感 徐々に模
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ革命
特集:トランプ革命
2025年2月 4日号(1/28発売)

大統領令で前政権の政策を次々覆すトランプの「常識の革命」で世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 4
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 5
    東京23区内でも所得格差と学力格差の相関関係は明らか
  • 6
    ピークアウトする中国経済...「借金取り」に転じた「…
  • 7
    「やっぱりかわいい」10年ぶり復帰のキャメロン・デ…
  • 8
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 9
    空港で「もう一人の自分」が目の前を歩いている? …
  • 10
    フジテレビ局員の「公益通報」だったのか...スポーツ…
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 3
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果が異なる【最新研究】
  • 4
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 5
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 6
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 7
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 8
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 9
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 10
    煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀…
  • 5
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 9
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 10
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story